伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

税務署員だけのヒミツの節税術 あらゆる領収書は経費で落とせる【確定申告編】

2014-05-19 21:31:10 | 実用書・ビジネス書
 「あらゆる領収書は経費で落とせる」の続編で、前著が会社(法人税)の経費にポイントを置いたものであったのに対して、この本では個人自営業者(所得税等)の場合にポイントを置いています。
 タイトルの「税務署員だけのヒミツの節税術」は自営業を主要な対象とするこの本にそぐわない感じがしますが、第1章で所得控除・税額控除一般の解説をしていて、その部分は給与所得者にも当てはまり、現に税務署員が積極的に利用していることが書かれているので、それに対応するものなのでしょう。
 著者が勧める「節税」のための経費の積極的計上の方法は、基本的に会社の場合と同じで、ただ個人自営業者の場合は、生活にも使えるものについては全額を経費とすることができず、事業とプライベートの割合を常識的な範囲で設定して按分し事業の割合分だけを経費計上すべきこととされています。会社の場合ならば、社長の自宅に置くテレビを買っても、そのテレビで事業の研究をしたという説明が付けば、事業の研究以外にも利用していても全額経費計上できるが、個人自営業者の場合は、「事業にも」利用しているというだけでは全額の経費計上はできず事業に用いた割合だけが経費計上できるということです。理屈としては、会社の場合は会社の名義で、社長個人名義ではなく、個人自営業者の場合は名義もプライベート利用者も同じ個人だという違いによるのでしょうけれども、やはり会社が優遇されて個人自営業者には厳しい取扱がされているという気がします。個人事業者の福利厚生費や交際費には税務署のチェックが厳しいとされていますし(80ページ、94ページ)。
 急に儲かって収入が膨らんだ時の経費増額の方法として中小企業倒産防止共済の利用が勧められています。儲かった時に共済に加入して掛け金を前払いすれば前払いでもその年に支払った掛け金全額が経費計上でき、掛け金は途中で減額できるし、いつでも任意解約して取り戻すことができ40か月以上後ならば解約で全額戻ってくるので、定期預金をして節税できるようなものとされています(113~121ページ)。解約時に戻ってくる解約手当金はその年の収入となります(この本ではそこまでは触れていませんが)ので、節税のためには収入が急に増えたときに加入して収入が大幅に減ったときに解約するということになります。
 青色申告について、複式簿記が求められ、それに対応するのに税理士に依頼するとメリット分以上に費用がかかるし、うっかりミスが許されなくなるので、青色申告が有利とは限らないこと、法人化すると税金上有利といわれるが会社は帳簿をきちんと作らなければならず、個人自営業者が法人化で節税するためには役員に家族を入れて役員報酬を支払って収益を分散化することが必要でその程度に儲かっていなければ節税にならないなどの指摘もあり、なるほどと思いました。


大村大次郎 中公新書ラクレ 2012年12月10日発行
コメント
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