伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

超訳 哲学者図鑑

2017-03-06 22:23:02 | 人文・社会科学系
 歴史上の有名な哲学者(著者の言葉によれば「ビッグな思想家」)60人の思想のポイントを各4ページで解説するという哲学入門書( For Beginners )。
 著者は、巻末の著者紹介によれば、河合塾その他の大手予備校で「日本史」「倫理」を担当する「鉄人講師」。目次( Contents )といいますか、取り上げた哲学者60人のリストを見て、まず感じることは、偉大な哲学者には、日本人はいないんだということ。「倫理」だけじゃなくて「日本史」も専門の著者がリストアップしてそうなのだから、歴史上、日本の哲学者には見るべきものがいないということなんでしょうね。
 私は、哲学は、どちらかというと苦手領域なので、哲学者のことはあまり知りませんが、この本で目についたのは、キケロ(古代ギリシャ)の項目で、「年をとればとるほど人生は楽しくなる」「老人は高度な仕事ができる」「いままでの思い出が多いのも老境の楽しみの1つ」などとされていること(32~35ページ)。それに共感するのは、私が年を取った証拠でしょうけど、これから先の人生を楽しむためにも、かみしめておきたい言葉です。
 他方、因果関係(例えばボールを投げると飛んでいくという原因と結果)は繰り返された経験による思い込みで信じられているだけで因果法則がどこかにあるわけではないというヒューム(イギリス)の項目(90~93ページ)は、日頃から因果関係、経験則をベースに業務(論証、裁判官等の説得)を行っている身には、驚天動地です。
 ハンナ・アーレントの項目では「現代の人間は思想に興味がありません。『思想なんて意味がない』『考えても仕方がない』という態度で、楽しいことだけを求めています。このようになにも考えない人たちが増えてくると、いつの間にか善悪がわからなくなってきます。すると、ヒトラーのような独裁者が出現するのです。」とされています(228ページ)。なるほど、昨今の情勢を見ると、哲学/思想を学ばなきゃ、ですね。


富増章成 かんき出版 2016年9月12日発行
コメント
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