伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

硝子の太陽N-ノワール

2017-03-10 22:38:55 | 小説
 フリーライターの上岡慎介が殺害された事件をめぐり、新宿ゴールデン街のバー「エポ」経営者陣内陽一ら「歌舞伎町セブン」メンバー、元警視庁捜査一課刑事の新宿署刑事課強行犯捜査第一係長東弘樹らに勝俣、姫川らが絡む警察周辺小説。
 姫川玲子シリーズかと思って読んだのですが、基本は「ジウ」シリーズ→「歌舞伎町セブン」→「歌舞伎町ダムド」の続編で、それに姫川玲子シリーズから勝俣と姫川がちょっとだけ登場する「コラボ小説」だそうな。シリーズを順に読み進む読者を想定しているようで、かつての「事件」、過去のしがらみのある謎の敵対者、あれこれの経緯が、そこここに登場し、シリーズを読んでいない読者にはちょっと辛い。
 ミステリーや刑事ものというよりは、「歌舞伎町セブン」の仲間を奪われての復讐ものと読んだ方がいいと思いますが、クライマックスとなるべき部分が、初期に見せる歌舞伎町セブンのポリシーとも整合しない感じがするし、それならそれで徹底すればいいのに、なんか中途半端な感じがします。事件の解決というか、真相の解明という点でも、まだ別の事情や事件が示唆され、さらに続編を書くということなんでしょうけど、すっきりしない印象です。
 沖縄問題/反基地闘争/米兵の犯罪糾弾の世論などについて、デモや世論の高揚を目的のためなら手段を選ばぬ左翼犯罪者による陰謀/デマによるものとし、沖縄にも米軍駐留を望みそれにより生活している者がいることを強調するというところがこの作品の基本的な設定となっています。作者が、沖縄闘争/左翼への執念深い敵意を持っているのか、左翼嫌いの読者に媚びているのか…


誉田哲也 中央公論新社 2016年5月15日発行
コメント
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