警視庁特殊犯捜査2係で犯人説得を担当していた門倉美咲巡査27歳が、人質立て籠もり犯の指示で下着姿になったところを雑誌記事にされて所轄に異動されながらも、その犯人が児童誘拐事件の共犯であることがわかり捜査本部に派遣され、捜査1課の切れ者刑事東弘樹警部補と組んで捜査を進めるうち、連続誘拐事件の主犯として浮上したジウと呼ばれる美少年を追うことになり、他方、門倉の同僚だった武闘派でその戦闘能力を買われて特殊急襲部隊(SAT)に異動した伊崎基子巡査25歳は謎の勢力に次第に引き寄せられ…という展開の警察アクション小説。
優しく涙もろく、しかし正義感が強く無鉄砲なところもある門倉美咲と、厭世的で自暴自棄で尖がった伊崎基子の対照的な性格の2人のヒロインと、切れ者で直情的で女心に鈍感な東弘樹のキャラで読ませていますが、特定の犯罪者(敵役)で3巻も引っ張っているうちに謎の美しくも怪しい敵キャラのジウも色あせ、展開が次第にち密さを失い大味で荒唐無稽になります。2巻から登場する「私」ことミヤジのストーリーでは、最初から命があまりにも簡単に奪われますし、3巻の歌舞伎町封鎖事件などは、もう戦争の趣で、人の命の重さなど無きに等しく描かれます。この作品で、いったい何人が殺されているのか、数える気にさえなれませんが、殺人・残虐行為に対する慣れ・感覚の鈍麻・諦め・無力感・無関心が、この作品の帰結というか読後感となるように思えます。
大仰に展開して見せたものの、権力内部に根を張る「新世界秩序(NWO)」なる敵は、警察内部でも権力の中枢部とまでは言えず、表に出るジウもミヤジもどこか巨悪と呼ぶには似つかわしくなく、中途半端な、悪くするとちゃちな印象を持ちます。
大きな展開部分での「陰謀」ないしは巨悪との闘いというテーマが読み物として現実感に欠けながら壮大とも言えないために、爽快な読後感を持てず、結局は、門倉の東に寄せる思いや伊崎の捨て鉢な生き様へのハラハラ感の方を読むべき作品だろうと思います。
誉田哲也 中公文庫
ジウⅠ 警視庁特殊犯捜査係【SIT】 2008年12月20日発行(単行本は2005年12月)
ジウⅡ 警視庁特殊急襲部隊【SAT】 2009年1月25日発行(単行本は2006年3月)
ジウⅢ 新世界秩序【NWO】 2009年2月25日発行(単行本は2006年8月)
優しく涙もろく、しかし正義感が強く無鉄砲なところもある門倉美咲と、厭世的で自暴自棄で尖がった伊崎基子の対照的な性格の2人のヒロインと、切れ者で直情的で女心に鈍感な東弘樹のキャラで読ませていますが、特定の犯罪者(敵役)で3巻も引っ張っているうちに謎の美しくも怪しい敵キャラのジウも色あせ、展開が次第にち密さを失い大味で荒唐無稽になります。2巻から登場する「私」ことミヤジのストーリーでは、最初から命があまりにも簡単に奪われますし、3巻の歌舞伎町封鎖事件などは、もう戦争の趣で、人の命の重さなど無きに等しく描かれます。この作品で、いったい何人が殺されているのか、数える気にさえなれませんが、殺人・残虐行為に対する慣れ・感覚の鈍麻・諦め・無力感・無関心が、この作品の帰結というか読後感となるように思えます。
大仰に展開して見せたものの、権力内部に根を張る「新世界秩序(NWO)」なる敵は、警察内部でも権力の中枢部とまでは言えず、表に出るジウもミヤジもどこか巨悪と呼ぶには似つかわしくなく、中途半端な、悪くするとちゃちな印象を持ちます。
大きな展開部分での「陰謀」ないしは巨悪との闘いというテーマが読み物として現実感に欠けながら壮大とも言えないために、爽快な読後感を持てず、結局は、門倉の東に寄せる思いや伊崎の捨て鉢な生き様へのハラハラ感の方を読むべき作品だろうと思います。
誉田哲也 中公文庫
ジウⅠ 警視庁特殊犯捜査係【SIT】 2008年12月20日発行(単行本は2005年12月)
ジウⅡ 警視庁特殊急襲部隊【SAT】 2009年1月25日発行(単行本は2006年3月)
ジウⅢ 新世界秩序【NWO】 2009年2月25日発行(単行本は2006年8月)