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伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

青くて痛くて脆い

2020-08-09 18:38:47 | 小説
 人に不用意に近づきすぎないこと、反対意見をできるだけ口に出さないことを心がける大学生田端楓が、懐に飛び込んできた理想を語る純真な秋好寿乃に引っ張られて「秘密結社」的なサークル「モアイ」を作るが、モアイが拡大していく過程でモアイが変質した、あのとき笑った秋好はもうこの世にいないと、現在のモアイを否定し、壊して元に戻すんだと主張して画策する青春独りよがり小説。
 自分自身が、思ってもいない言葉を駆使し演技して就活に奔走して内定を得ていながら、就活のためのパーティーや交流会等を開催する「モアイ」が就活サークルになってしまったと、非難する主人公の立ち位置、端的に言って自分にかまってくれていた秋好が遠くに行ってしまったということに拗ねて自分が抜けて行きながら、遠くからモアイを非難し続ける歪んだ執念深さ、人を不快にさせないようにするという最初に語る信条と現実にすることの乖離など、この主人公の言うことなすことにただ気持ち悪さを感じ、読んでいてずっと居心地の悪さを感じました。
 ネットの匿名性の陰に隠れて昏い悪意を持ち続ける人々には、こういう第三者からは独りよがりの歪んだ考えにしか見えないものが、相手が変質した、相手が悪い、自分が正しいんだと見えているのだろうなと、思わせてくれます。そしてラストには、そういう独りよがりのことをしていても悔い改めれば相手は許してくれるという本人のムシのよさと作者の温かさのハーモニーが待ち受けていて、どう受け止めていいのか悩ましい読後感でした。


住野よる 株式会社KADOKAWA 2018年3月2日発行
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