交通事故が労災にもあたるとき(通勤中の交通事故や業務中の交通事故の多くはそうなります)に、自賠責保険・任意保険による賠償だけでなく労災保険にも請求することのメリットを説き、社会保険労務士に相談しようと宣伝する本。
治療に関しては、長期の治療継続が見込まれる場合に、自賠責保険・任意保険では保険会社側が打ち切りを言ってくるリスクがあるのに対して、労災保険では治療効果で判断される、労災保険は労働者の故意や重大な過失による場合に支給制限があるが過失相殺はない、事故による負傷後に退職しても休業補償は打ち切られないなどの点で労災保険を利用するメリットがあり、被害者側の過失が50%未満で損害額が120万円までの場合(自賠責で満額保障される)や死亡・後遺障害がある事案(労災保険では慰謝料がないため自賠責保険・任意保険の方が支給額が多くなる)では自賠責保険・任意保険請求を先行させ、その後に労災保険で追加の支給を検討するべきことを論じています。
交通事故被害者の救済のために労災保険も請求しましょうという趣旨の本のはずなのに、後半3分の1を企業の立場からの自動車・自転車利用管理、言い換えれば企業が従業員の自動車・自転車利用で責任を負わされることをできるだけ回避するための規則規定類の整備に充てています。このあたり、社会保険労務士が企業ニーズを掘り起こしてそこから業務につなげたいという意識・姿勢がとてもよく表れています。
消滅時効について「加害者に損害賠償を請求できる権利は、損害および加害者を知った時から3年間請求しないと、時効によって消滅します(民法第724条)。」と書かれています(66ページ)。今年(2020年)4月1日に施行された民法改正で人の生命または身体を害する不法行為の時効は5年に変更されています。民法改正施行のすぐ後に出版されたこの本でそのことに言及していないのは、専門家が書いた本としては致命的に思えるのですが。
一般社団法人「ともに」
後藤宏、高橋健、松山純子 日本法令 2020年5月1日発行
治療に関しては、長期の治療継続が見込まれる場合に、自賠責保険・任意保険では保険会社側が打ち切りを言ってくるリスクがあるのに対して、労災保険では治療効果で判断される、労災保険は労働者の故意や重大な過失による場合に支給制限があるが過失相殺はない、事故による負傷後に退職しても休業補償は打ち切られないなどの点で労災保険を利用するメリットがあり、被害者側の過失が50%未満で損害額が120万円までの場合(自賠責で満額保障される)や死亡・後遺障害がある事案(労災保険では慰謝料がないため自賠責保険・任意保険の方が支給額が多くなる)では自賠責保険・任意保険請求を先行させ、その後に労災保険で追加の支給を検討するべきことを論じています。
交通事故被害者の救済のために労災保険も請求しましょうという趣旨の本のはずなのに、後半3分の1を企業の立場からの自動車・自転車利用管理、言い換えれば企業が従業員の自動車・自転車利用で責任を負わされることをできるだけ回避するための規則規定類の整備に充てています。このあたり、社会保険労務士が企業ニーズを掘り起こしてそこから業務につなげたいという意識・姿勢がとてもよく表れています。
消滅時効について「加害者に損害賠償を請求できる権利は、損害および加害者を知った時から3年間請求しないと、時効によって消滅します(民法第724条)。」と書かれています(66ページ)。今年(2020年)4月1日に施行された民法改正で人の生命または身体を害する不法行為の時効は5年に変更されています。民法改正施行のすぐ後に出版されたこの本でそのことに言及していないのは、専門家が書いた本としては致命的に思えるのですが。
一般社団法人「ともに」
後藤宏、高橋健、松山純子 日本法令 2020年5月1日発行