パリで小説を書きながら書家を生業としている72歳の父澤凪泰治が1年前から「一過性健忘症」の発作を繰り返し、今自分がどこにいるのかわからないというヘルプコールを受けて度々仕事をキャンセルしてパリの街を探し回る30歳の語学学校講師澤凪充路(ジュール)が、幼いときに母が駆け落ちして事故死した相手のフランス人男性リシャール・マルタンの娘リリーと交際を続ける様子、父の家政婦たちとの悶着等を描いた小説。
自分の父が死亡した原因を作った女性の子を訪ね、父の死の真相を知りたいと調査と議論を続け、逃げようとするジュールを追いかけて話を続け、堂々巡りをしてけんかをすることもしばしばだったリリーが、その相手ジュールに好意を持ち、デートを重ね、ジュールも好意を持ち交際するようになるという設定に、そんなことがあるのかなぁという違和感があって(知り合ってから事実を知ったのではなくて、リリーはそれと知ってジュールを探して会いに行き、ジュールは最初にリリーに事実を告げられたというのに…)、なかなか2人が恋仲になり、結婚を決意し、という展開に入って行きにくい思いをしました。
妻が男と駆け落ちして事故死していなくなり幼い息子を育てるために決意して実践してきた父の姿と、その父が老いて健忘症に悩まされる姿を通じて、父子関係を考え味わうメインテーマでの読み味はいいと思うのですが。

辻仁成 集英社文庫 2020年7月25日発行(単行本は2017年5月)
自分の父が死亡した原因を作った女性の子を訪ね、父の死の真相を知りたいと調査と議論を続け、逃げようとするジュールを追いかけて話を続け、堂々巡りをしてけんかをすることもしばしばだったリリーが、その相手ジュールに好意を持ち、デートを重ね、ジュールも好意を持ち交際するようになるという設定に、そんなことがあるのかなぁという違和感があって(知り合ってから事実を知ったのではなくて、リリーはそれと知ってジュールを探して会いに行き、ジュールは最初にリリーに事実を告げられたというのに…)、なかなか2人が恋仲になり、結婚を決意し、という展開に入って行きにくい思いをしました。
妻が男と駆け落ちして事故死していなくなり幼い息子を育てるために決意して実践してきた父の姿と、その父が老いて健忘症に悩まされる姿を通じて、父子関係を考え味わうメインテーマでの読み味はいいと思うのですが。

辻仁成 集英社文庫 2020年7月25日発行(単行本は2017年5月)