長崎の極道の親分のひとり息子で新年会の余興のために稽古を付けられて類い稀な才能を見いだされた立花喜久雄が父親を殺されて長崎を追われて関西歌舞伎の役者花井半二郎に引き取られ、半二郎の息子俊介とともに歌舞伎の女形として才能を開かせるが、後継者の指名、実力者による圧力・排斥等に翻弄され、雌伏の時を経て歌舞伎界の頂点に立つまでを描いた小説。
歌舞伎についてのうんちく、演目、演技等についてのこだわりに比べて、登場人物の人間関係や行動についての書きぶりは端折りや先細りが目に付きます。俊介が喜久雄の情婦だった春江と出奔した経緯、その後10年間の様子など、ストーリーからして読者がいつかは書かれるものと期待する点が、ずいぶんとあっさり終わっています。序盤の展開から、どこで落とし前が付けられるのかと読者が待つ喜久雄の父親殺しが弟分の辻村の裏切りによるものだったことを喜久雄が知る場面とその時の喜久雄の反応も、最後まで先送りされた末に、これだけもったいぶってこれだけ?と思わせられます。
吉田修一 朝日新聞出版 2018年9月30日発行
朝日新聞連載
歌舞伎についてのうんちく、演目、演技等についてのこだわりに比べて、登場人物の人間関係や行動についての書きぶりは端折りや先細りが目に付きます。俊介が喜久雄の情婦だった春江と出奔した経緯、その後10年間の様子など、ストーリーからして読者がいつかは書かれるものと期待する点が、ずいぶんとあっさり終わっています。序盤の展開から、どこで落とし前が付けられるのかと読者が待つ喜久雄の父親殺しが弟分の辻村の裏切りによるものだったことを喜久雄が知る場面とその時の喜久雄の反応も、最後まで先送りされた末に、これだけもったいぶってこれだけ?と思わせられます。
吉田修一 朝日新聞出版 2018年9月30日発行
朝日新聞連載