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伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

土 地球最後のナゾ

2020-08-11 22:38:23 | 自然科学・工学系
 土の研究を続ける著者が、京都の吉田神社の裏山の未熟土を手始めに、世界各地の12種類の土(世界中の土は大きく分類すると12種類しかないんだそうです)を求め掘り出しに旅を続ける過程を紹介しながら、土の成り立ち、性質等を説明する本。
 岩が風化して砂等になるのはわかるんですが、これが保水力、栄養分を持つ「土」になるのには、植物が(微生物により)分解された「腐植」と粘土と水などが必要で、しかも土があれば肥沃(植物が良く育つ)とは限らず、世界中でも肥沃な土地は少ないのだそうです。日本の土は蒸し暑い夏には植物の根も微生物も土中で呼吸するので膨大な二酸化炭素が放出されて酸性度が高く(pH4とか3だって)、それが岩石を溶かして土に変えるのだとか(58~61ページ)。さらに日本では火山灰が多くその中にアロフェンという吸着力の強い粘土があって、これが腐植と結合して腐植の分解を防いで腐植が多く黒い日本特有の土を生み出しているのだそうです(130~135ページ)。
 著者の関心が、土の性質を活かした農業に向けられているので、アロフェンがリン酸を吸着して植物がリンを吸収しにくい日本の土壌で、根から有機酸(シュウ酸)を出してアルミニウムや鉄を溶かしリン酸を吸収できるソバが黒い土(黒ぼく土)地帯の特産物となった(195ページ)とか、オーストラリアの砂漠でスプリンクラー散水して牛を放牧したのが成功したのは牛の柔らかい糞を分解できるフンコロガシをアフリカやヨーロッパから導入したため(160~163ページ)とかの話も多く掲載されていて、むしろそちらが興味深く思えました。


藤井一至 光文社新書 2018年8月30日発行
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