地下水・湧水の成り立ち、特徴、飲用・生活用水・農業用水・工業用水としての利用、歴史、地下水の汚染、地下水をめぐる法制度等をQ&A形式で解説した本。
日本やイギリス(島国)では火成岩系の地質でミネラルが溶け出しにくく傾斜が急なために地下水の流速が速いことから軟水が多く、茶の成分をよく抽出するため緑茶・紅茶の文化が発達し、出汁が取りやすいのに対し、石灰岩質で地形が緩やかな大陸ヨーロッパでは硬水が多く硬水でも支障がないコーヒーが普及し、硬水を直接料理に使わずスープストックを使うなどの説明(154~157ページ)は興味深く読めました。
地下水の権利については、伝統的に土地所有権に付随するもので土地所有者が地下水(井戸等)を自由に利用してよいというのが裁判所の立場です。この本では、その上で、1966年には地下水が共同資源であり、同一の帯水層中の地下水を利用する場合は、利益・損益の公平かつ妥当な配分の原則を示す判決が出されましたと紹介している(115ページ)のですが、どの裁判所の判決なのかも書かれておらず、注記されている参考文献は他の人の本(それも法律系の本でないことが一見明らか)です。調べてみると、ここでいわれている判決は、松山地裁宇和島支部の1966年6月22日判決で、この判決の後も、土地所有者が自由に利用できるという判決が多数出ていて、この判決が流れを変えたというわけでもないようです。ずいぶんとたくさんの人で分担して執筆しているのですから、法制関係は法律の専門家に執筆依頼した方がいいと思うのですが。
公益社団法人日本地下水学会編 成山堂書店 2020年6月28日発行
日本やイギリス(島国)では火成岩系の地質でミネラルが溶け出しにくく傾斜が急なために地下水の流速が速いことから軟水が多く、茶の成分をよく抽出するため緑茶・紅茶の文化が発達し、出汁が取りやすいのに対し、石灰岩質で地形が緩やかな大陸ヨーロッパでは硬水が多く硬水でも支障がないコーヒーが普及し、硬水を直接料理に使わずスープストックを使うなどの説明(154~157ページ)は興味深く読めました。
地下水の権利については、伝統的に土地所有権に付随するもので土地所有者が地下水(井戸等)を自由に利用してよいというのが裁判所の立場です。この本では、その上で、1966年には地下水が共同資源であり、同一の帯水層中の地下水を利用する場合は、利益・損益の公平かつ妥当な配分の原則を示す判決が出されましたと紹介している(115ページ)のですが、どの裁判所の判決なのかも書かれておらず、注記されている参考文献は他の人の本(それも法律系の本でないことが一見明らか)です。調べてみると、ここでいわれている判決は、松山地裁宇和島支部の1966年6月22日判決で、この判決の後も、土地所有者が自由に利用できるという判決が多数出ていて、この判決が流れを変えたというわけでもないようです。ずいぶんとたくさんの人で分担して執筆しているのですから、法制関係は法律の専門家に執筆依頼した方がいいと思うのですが。
公益社団法人日本地下水学会編 成山堂書店 2020年6月28日発行