伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

他者を感じる社会学 差別から考える

2021-04-09 20:37:40 | 人文・社会科学系
 差別について、原理的・哲学的な観点からの考察や、著者の経験やこれまでに見た各種の作品を通して考えたことなどを解説し論じた本。
 他者をカテゴリーに当てはめるという日常的な認識自体が差別を必然的に生じさせかねない、つまり自分が差別をするということは、常時「あり得る」という認識が度々語られます。差別など自分とは関係ない、別世界のこと、他人事と捉えるべきでないという主張は、わかるのですが、同時に、誰もが差別をしかねないという認識が、確信犯的な差別、悪質な差別を相対化してしまいかねないというリスクもまたあるような気がします。もちろん、著者にはそういう意図はないでしょうけれども、人間、自分もまたやりかねないと思う行為に対しては甘く(寛容に)なるという面はあると思うのですが。
 ネット(スマホ)でのやりとりについて、匿名性が相手を傷つける行為を成立させる大きな要因であるというだけでなく、やりとりの速度に慣れていくうちに向こう側に人間がいること、自分と同じ人間がいることを忘れて機械(スマホ)を通したやりとりに没入していることが、他者を差別し排除できることにつながりやすいという指摘が「はじめに」にあり、そちらにハッと引きつけられました。つかみが結局はいちばん頭に残るというのは、ビジネス書の類いではよくあることですが。


好井裕明 ちくまプリマー新書 2020年11月10日発行
コメント
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