伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

学校、行かなきゃいけないの? これからの不登校ガイド

2021-04-28 23:52:19 | 人文・社会科学系
 「あなたを大切にしてくれない場所にいてはいけない」というメッセージを発しつつ、不登校でかまわないことをさまざまな人の話を使って論じた本。
 著者自身が、10代には絶対に戻りたくない、人生で一番つらかった時はと聞かれたら迷わず中学時代と答える、今私はこの時期に不登校をしなかったことを悔いている、無理に無理を重ねて学校に行き続けたことによってしなくてよかった嫌な思いをしたことを私は今も悔いている、今私はあの頃の自分に「すぐに逃げろ!」と言いたい、いじめから約30年が過ぎ45歳になっても人が怖いし人間不信は消えていない、実家に帰っても決してひとりで外を出歩かない、いじめっ子にもし会ったらと思うとそれだけで目の前が真っ暗になるからだなどと語る「はじめに」(11~26ページ)のアピールが強烈に刺さります。
 世田谷区立桜丘中学校で10年かけて校則をゼロ(小テストはするが定期テストは廃止、宿題もなし、登校時間は自由でチャイムもなし)にしたという元校長の話、赴任直後に朝礼で生徒がざわつくと怒鳴る教師達に「もし生徒がうるさくしても、それは私の話がつまらないせい。だから生徒を怒鳴ることをやめましょう」といったというエピソード(59ページ)、授業中に生徒が寝ることも自由として教師に「授業中に寝ている子どもがいたら、起こさずにそのまま寝かしてあげなさい。もし自分の授業で寝られるのが嫌だったら、起きていたくなるような面白い授業をしなさい」といったというエピソード(66~67ページ)、なんだか力が抜けていいなと思う。区立中学でこういうことができたということが素晴らしいと思います。それはこの本では触れられていませんけど、「中学全共闘」で内申書裁判を闘った人が世田谷区長を務めているという事情と無縁ではないと思いますが。
 学校は以前より管理的になっている、他方で親も踏ん張れないような社会状況になっていて、不登校が増えている、それは2000年頃からそういう傾向が強くなった(105~106ページ)とか(2000年というと、森政権・小泉政権の頃ですね)、今コロナ禍で授業なんかオンラインでやればいいという人が多いがこの国にはパソコンやネット環境がない子もいる、そんな家庭があることの想像もつかない人が「オンラインで」というとき貧しい家庭の子どもたちは排除されている(88~89ページ)とかの指摘にも、なるほどと思います。個人的には、コロナ禍で何でもリモートだオンラインだZoomだという勢力に、とても反発を感じている天邪鬼なもので。
 大人のただの失敗談、その失敗を乗り越えたという自慢じゃなくてただ情けない失敗談を聞きたい(153~159ページ)というのも、そのとおりだなぁと思います。自分が話す側になるのは厳しいですが。


雨宮処凜 河出書房新社 2021年1月30日発行
14歳の世渡り術シリーズ
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