裁判での事実認定について、基本的な考え方、証拠に基づく事実の認定、いくつかの事実からの推認などを最高裁判決を中心とする判決の事実関係と提出された証拠を検討しつつ解説した本。
証明の程度(裁判官にどの程度の心証を形成させることが必要か)や認定/主張立証すべき事実の具体性の程度(概括的認定をめぐって)などを論じた第1章、文書(契約書)による事実認定や供述(証人の証言、当事者の陳述)による事実認定を論じた第2章、間接事実を積み上げる立証などを論じた第3章は、民事裁判に携わる者にとってはとても参考になります。これらの事実認定、証拠から個別の事実を認定する過程、認定した事実の組み合わせからさらに事実を推認する過程で、さまざまな経験則が論じられているところ、その経験則に関して判示した判決、特に相当数の最高裁判決の解説とそこから読み取るべきメッセージの解説は、素晴らしい。一度ならず繰り返し読んでみたいと感じました。
私のサイトでも、裁判は事件ごとに事実関係が異なり提出される/されうる証拠も事件ごとにさまざまで、その事件の内容、展開、それまでの立証状態とさらにはその時点での裁判官の心証に応じてそのときそのときで考えて進める必要があり、マニュアルや勝利の方程式などといった安直な思考方法はまったく通じないことを強調しているつもりですが、この本を読んでいただくと、それが実感されると思います。民事裁判は、まさにこの本で紹介されている判決の事案のような個別場面でこの本で論じられているようなことを考えて遂行するものです。その意味で、民事裁判をしようと考える方には是非読んでいただきたいなと思いますし、この本を楽しめない/読むのが苦痛だというような人は、とても本人訴訟などできる能力はないと自覚して欲しいところです。
この本では、事実認定における経験則違反を論じた最高裁判決が多数紹介されています。最高裁民事判例集(公式判例集)登載の著名な判決のみならず、判例時報に掲載された論文(最高裁民事破棄判決等の実情)の中で紹介されている判決にも多数言及されていて勉強になりました。これらの原判決の経験則違反を指摘する最高裁判決は、主として事実認定に不満があって上告(上告受理申立て)した事件の上告理由書・上告受理申立て理由書作成にも参考になり、また最高裁が経験則違反(審理不尽、理由不備等)を理由に原判決を破棄している事案が相当数あることも改めて実感され、力づけられるところでもあります。
田中豊 民事法研究会 2021年3月22日発行(初版は2008年)
証明の程度(裁判官にどの程度の心証を形成させることが必要か)や認定/主張立証すべき事実の具体性の程度(概括的認定をめぐって)などを論じた第1章、文書(契約書)による事実認定や供述(証人の証言、当事者の陳述)による事実認定を論じた第2章、間接事実を積み上げる立証などを論じた第3章は、民事裁判に携わる者にとってはとても参考になります。これらの事実認定、証拠から個別の事実を認定する過程、認定した事実の組み合わせからさらに事実を推認する過程で、さまざまな経験則が論じられているところ、その経験則に関して判示した判決、特に相当数の最高裁判決の解説とそこから読み取るべきメッセージの解説は、素晴らしい。一度ならず繰り返し読んでみたいと感じました。
私のサイトでも、裁判は事件ごとに事実関係が異なり提出される/されうる証拠も事件ごとにさまざまで、その事件の内容、展開、それまでの立証状態とさらにはその時点での裁判官の心証に応じてそのときそのときで考えて進める必要があり、マニュアルや勝利の方程式などといった安直な思考方法はまったく通じないことを強調しているつもりですが、この本を読んでいただくと、それが実感されると思います。民事裁判は、まさにこの本で紹介されている判決の事案のような個別場面でこの本で論じられているようなことを考えて遂行するものです。その意味で、民事裁判をしようと考える方には是非読んでいただきたいなと思いますし、この本を楽しめない/読むのが苦痛だというような人は、とても本人訴訟などできる能力はないと自覚して欲しいところです。
この本では、事実認定における経験則違反を論じた最高裁判決が多数紹介されています。最高裁民事判例集(公式判例集)登載の著名な判決のみならず、判例時報に掲載された論文(最高裁民事破棄判決等の実情)の中で紹介されている判決にも多数言及されていて勉強になりました。これらの原判決の経験則違反を指摘する最高裁判決は、主として事実認定に不満があって上告(上告受理申立て)した事件の上告理由書・上告受理申立て理由書作成にも参考になり、また最高裁が経験則違反(審理不尽、理由不備等)を理由に原判決を破棄している事案が相当数あることも改めて実感され、力づけられるところでもあります。
田中豊 民事法研究会 2021年3月22日発行(初版は2008年)