2005年から2007年にかけて話題を巻き起こした3部作を作者の死後別の作者が引き継いだ後の第3作。訳者あとがきによれば、新作者はこれでおしまいと言っているけれども、さらに別の作者に続編を書かせる話もあるそうです。
新3部作に入ってリスベット・サランデルの敵として登場した双子の妹カミラとその取り巻き対リスベットの駆け引きと、公園で息絶えた物乞いの正体とその死、その過去をめぐるストーリーの2本が並行して展開するのですが、作者がかつて登山家のノンフィクションを書いた経験を反映したのでしょうけれども後者のボリュームが大きく、それが前者とあまりうまく絡みあわず、シリーズの読者にはさほど興味を持てないままに冗長感が募るように思えました。
後者には軍が絡んでいるという設定ではありますが、組織的にと言うよりはその中の個人の権力濫用的な印象ですし、前者はまったくサランデル家の内部抗争で、財閥や国家権力の悪行を暴き闘うという志向が強かった旧3部作とは問題意識の違いが感じられます。登場人物のキャラクター、行動パターン、嗜好等は受け継いでも、志の部分で差があるようです。
サランデル家の物語を何とかドタバタアクションで強引に終わらせたものの、作品の大部分を昔の山の中のできごとの解明という読者が強い関心を持てないことで費やし、それを最後までサランデル家の物語につなげられなかったという点で、読者がよい読後感を持つことが期待できない代物だと思います。
原題:HON SOM MASTE DO
ダヴィド・ラーゲルクランツ 訳:ヘレンハルメ美穂、久山葉子
早川書房 2019年12月15日発行(原書は2019年8月)
新3部作に入ってリスベット・サランデルの敵として登場した双子の妹カミラとその取り巻き対リスベットの駆け引きと、公園で息絶えた物乞いの正体とその死、その過去をめぐるストーリーの2本が並行して展開するのですが、作者がかつて登山家のノンフィクションを書いた経験を反映したのでしょうけれども後者のボリュームが大きく、それが前者とあまりうまく絡みあわず、シリーズの読者にはさほど興味を持てないままに冗長感が募るように思えました。
後者には軍が絡んでいるという設定ではありますが、組織的にと言うよりはその中の個人の権力濫用的な印象ですし、前者はまったくサランデル家の内部抗争で、財閥や国家権力の悪行を暴き闘うという志向が強かった旧3部作とは問題意識の違いが感じられます。登場人物のキャラクター、行動パターン、嗜好等は受け継いでも、志の部分で差があるようです。
サランデル家の物語を何とかドタバタアクションで強引に終わらせたものの、作品の大部分を昔の山の中のできごとの解明という読者が強い関心を持てないことで費やし、それを最後までサランデル家の物語につなげられなかったという点で、読者がよい読後感を持つことが期待できない代物だと思います。
原題:HON SOM MASTE DO
ダヴィド・ラーゲルクランツ 訳:ヘレンハルメ美穂、久山葉子
早川書房 2019年12月15日発行(原書は2019年8月)