伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

認知症の新しい常識

2021-07-29 23:22:37 | 実用書・ビジネス書
 「週刊新潮」でのアルツハイマー型認知症の治療薬、治療法についての記事を取りまとめた本。
 アルツハイマー型認知症の原因物質と見られているアミロイドβは睡眠中に脳から排出されることが示唆され、睡眠不足は認知症リスクを高める可能性があるとされています(98~100ページ)。歯周病もアルツハイマー型認知症のリスクを高め(103~105ページ)、糖尿病もアルツハイマー型認知症のリスクを高め(112~114ページ)、中年期の肥満は将来の認知症リスクを高めるが、高齢期(65歳以上)ではやせている方が認知症リスクが高いのだそうです(115~118ページ)。いろいろ気にし出すと切りがないし、節制してもリスクが少し減るだけで認知症にならないと保証されるわけでもありませんが。
 認知症の老人が駅のホーム横の線路で電車に轢かれて死んだ際に、JR東海が家族に老人ホームに入れるか屋内に閉じ込めておくべきだったなどとして巨額の損害賠償請求をした事件のことが紹介されています(19~24ページ、152~161ページ)。認知症患者が徘徊の末に線路に迷い込んで電車に轢かれたというとき、鉄道会社にとって迷惑ではありましょうけれど、遺族からすれば、大切な人が電車に轢かれて亡くなったのです。元気な若者が柵を乗り越えて線路に入るのを防止するのは難しいとしても、認知症の老人が線路に迷い込まないように駅のホーム等を管理することは不可能なのでしょうか。むしろ遺族の方が被害者意識を持っても不思議はない場面のように思えます。その報道に接したとき、人の命を奪っておいて家族に損害賠償請求するJR東海とそれに加担する弁護士に、私は非常に阿漕なものを感じました。JR東海を利用せずにすむのなら不買運動でもしたいところですが、そうも行かないのが残念に思っています。この本が遺族側でJR東海を責めているのを見て、「週刊新潮」と意見が一致することもあるのだと驚きました。


緑慎也 新潮新書 2021年2月20日発行
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