伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。今年も目標達成!

知的財産法[第5版] 【伊藤真実務法律基礎講座3】

2021-07-15 00:14:58 | 実用書・ビジネス書
 司法試験を中心とする試験対策を主目的として、特許法・実用新案法、著作権法、意匠法、商標法等の知的財産法の主要部分を概説する入門書。
 各制度の権利の発生(保護)要件、権利の内容(権利発生等の効果)、侵害に対する救済手段(侵害者に対する請求)を連続して読むことにより、各制度の違いとそれらが総合して何を守ろうとしているのか、制度全体の構造を知るという観点で、その薄さ、読みやすさからして優れた本だと思います。
 司法試験受験者を主たる読者層としているため、この項目は司法試験頻出項目であるという生々しい指摘が多数あり、知的財産法の概説書として読んでいる気分から時々ハッとさせられます。弁護士実務のために読む本では、最高裁判例、下級審裁判例は出てきても、学説の紹介はないことが多く、また学説の紹介部分はまじめに読まない(裁判官を説得するのに学者さんの見解はあまり有効性がないため)のですが、司法試験では通説と有力説の対立の場合学説も聞かれることもある(私が司法試験受けたのもう40年近く前なので、懐かしい話ですが)ので、学説の対立も時々紹介されていて、そういう点からもあぁやはり司法試験のための本だなと感じます。
 著作権法では、著作権の制限(自由利用)関係はほとんど紙幅を割かれていなくて、知的財産法で司法試験を受ける人たち、そして司法試験も、一般人側ではなくて、著作権者、実質は著作者から著作権の譲渡や許諾を受けた著作権ビジネス業者を守る側にしか関心がないんだろうなと感じてしまいました。哀しい現実、ですが。


監修:伊藤真、伊藤塾著 弘文堂 2021年5月30日発行(初版は2004年)
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