伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

ASK トップタレントの「値段」 上下

2021-07-16 23:28:24 | 小説
 ジコチュウで高飛車な美貌のグラドル堀口優奈が、さまざまな駆け引きでライバルを蹴落としてのし上がり、所属プロダクションの豪腕社長新庄と対立して莫大な負債を負わされては危機をすり抜けて再度新庄との対立と駆け引きを繰り返すという展開の小説。
 「週刊プレイボーイ」連載ということもあって、セックスシーンと暴力シーンが、読者サービスというか、読者の関心を惹くために、ストーリー上の必然性など無視して、繰り返されています。
 週刊誌への長期連載のため、おそらくは途中で気が変わったためと思われますが、①プロローグで友人の芸能記者から「堀口優奈はいま、渋谷のデリヘルで働いている」と知らされ(上巻10ページ)、それから伝手をたどって入会申込をした風采の上がらない中学教師が、どうして堀口優奈の最初の客(上巻478ページ)なのか、②新庄が真のオーナー(下巻53ページ)のデリヘルについて、どうして所属するデリヘル嬢も料金もわからず、新庄の認識で「真のオーナーは末永だ」(上巻382~386ページ)なのか、などの謎があり、③途中まで主要な登場人物だった栗山がその後どうなったのかまったく言及されないままになっているなどの不完全燃焼感があります。最後の点は、前半は新庄対栗山という図式、その中で堀口優奈がどちらをどう利用して駆け引きするのかという読ませ方だったのが、後半は新庄対堀口優奈という図式に変わった感があります。
 それくらいの個性というか我の強さがないと生き残れない業界なのでしょうけれども、あくの強い強欲な人物が戦いに勝ち、善人はただ踏みにじられる、そういう容赦のないバイオレンスものを好む/受け入れられるかが、評価を分ける小説だと思います。


新堂冬樹 集英社文庫 2020年9月25日発行(単行本は2018年5月)
「週刊プレイボーイ」連載
コメント
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