伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

理系研究者の「実験メシ」 科学の力で解決!食にまつわる疑問

2021-08-02 20:09:18 | 自然科学・工学系
 研究者にして「理系小説家」の著者が、家庭でできる実験レベルで、遠心力でフィルターを使用せずにコーヒーを入れる(粉とコーヒーを分離する)、太陽熱でご飯を炊く、家電の放熱で納豆を作る、インスタントラーメンののびても食べられる(まずくならない)時間の限界を測定する、ポケットに入るサイズの調理機器でポップコーンを作る、自転車に乗った際の振動で生クリームからバターを作る(ホエーとバターに分離する)、クックパッドのレシピの平均値と料理本のレシピで作ったガレットの味を比較する、超音波で泡盛を熟成させる、たくあんを自動製造する機械を作るということにチャレンジした過程と結果を綴った本。
 著者も言うように、夏休みの自由研究のノリで読む本です。
 試行錯誤の過程を書いているのですが、ペットボトルを振り回すのに1mの紐付きは無理だろうとか、自転車をこぐ揺れ(背中にしょったリュックの中に入れておくだけ)で生クリームがバターにならないくらいは、やってみるまでもなくわかると思うのですが…
 専門店で食べたスパイスと水だけで作るカレーを再現しようとレシピも調べて忠実にやってもできず、「さんざん失敗作を食べた後、ある忙しい日の夕食時に、嫁と1袋100円ほどのレトルトのカレーを食べた時、あまりの美味しさにショックを受けた。自分は何をやっていたんだと涙が出そうになった」(224ページ)というのが、実感がこもっていて哀しい。料理の実践には、そういうことがありがちというかつきまとうものです。
 細かいことですけど、「N2+3H2→2NH3」の化学式を示して「二つの窒素分子(略)と三つの水素分子が反応して二つのアンモニア分子ができる」(183~184ページ)って、何とかなりませんか。どうみても一つの窒素分子(と三つの水素分子)なのに、専門の人が、それも科学では数量が決まっていて曖昧なことは許されないという趣旨の話をするときにこういうことを言われると何だかなぁと思います。


松尾佑一 光文社新書 2021年5月30日発行
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