伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

眠れないほど面白い『枕草子』 みやびな宮廷生活と驚くべき「闇」

2021-08-14 22:48:06 | 人文・社会科学系
 予備校講師による枕草子の解説・学習のお勧め本。
 著者が選んだ段を、「超現代語訳」、解説、原文、現代語訳を並べ、最後に登場する言葉や風習などの「ワンポイントレッスン」を置く構成で解説しています。くだけた「超現代語訳」が、売りというかアイキャッチなのでしょうけれども、その点では、その昔「桃尻語訳枕草子」(橋本治)というもっとぶっ飛んだ本が出ているので、新鮮さを感じられませんでした。枕草子でいうと、「はしたなきもの」…といったらあんまりでしょうか。「超現代語訳」を最初に置きながら、原文の後にもう一度現代語訳を配しているのは、くどいようにも見えますが、あくまでも冒頭の「超現代語訳」はつかみで、その段に興味を持ってもらうだけのものと位置づけ、原文と現代語訳を読んで欲しいというのが目的なんでしょうね。原文を読んだ後、やっぱりその次に現代語訳があるのを続けて読もうとわりと素直に思えました。その点、枕草子自体を読ませようという予備校講師の術中にはまった感じです。
 タイトルの「眠れないほど面白い」はさすがに無理な印象です。シリーズタイトルだから仕方ないのでしょうけれども。サブタイトルも「みやびな宮廷生活」の方はいいですが、「驚くべき『闇』」はどこに?という感じがします。
 137段、山吹の花びらに「言はで思ふぞ」と書かせ給へるってどうやって書くのと思う。極細筆?墨はちゃんと乗るのかとか、気になります。
 私はなぜか、枕草子というと3段の「舎人の顔のきぬもあらはれ、まことに黒きに、白きものいきつかぬ所は、雪のむらむら消え残りたるここちしていと見苦しく」が印象に残っているのですが、そこは選ばれていませんでした。数少ない知っている段の解説がないとちょっと寂しい。


岡本梨奈 三笠書房(王様文庫) 2021年2月20日発行
コメント
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