料理が苦手で嫌いなため家庭的と見られないように知らないマイナーバンドのTシャツで過ごす「四捨五入すると30歳になる」(42~43ページ)鉄道会社の子会社の総務部に勤める須田優花が、好きなタイプは料理上手な人という真島の通算6名以上いたという「本命じゃない彼女」になり、料理が好きになろうと苦闘を重ねるという小説。
真島という人物の変人でありながらその中身のなさ、主人公が「料理は愛情」などの言葉に反発しながら、料理以外のことがらで自分を磨き何かに打ち込もうとすることも、自分の好きなことやりたいことを見つけることも、自分をアピールできることを見出すこともなく、ただ料理が苦手なことの言い訳と正当化を試みてはムダに挫折して苦しみ続け、言うことは中身のない真島のコピーだったりする様は、読んでいて入り込みにくく虚しく思えました。イヤなものはイヤ、いい人だから好きになれるわけじゃない、無内容な人物でも好きになったのは仕方ない、そういう主張はそれはそれでいいけれど、また人生は往々にしてそんなものだけど、小説では、それならそれでほかの領域で何か打ち込めるもの、夢中になれるもの、詳しくハイレベルなことを書き込めるものを打ち出して欲しいと思います。
主人公の勤務先の1年後輩の坂間が、ハムスターのつがいを飼ったら、リンゴとスターと名付けるのが中2のときから夢だった(73~74ページ)って、(2010年頃に中2だったことになるはずですが)一体どういう中学生だったん?
佐々木愛 文春文庫 2023年5月10日発行(単行本は2021年1月)
真島という人物の変人でありながらその中身のなさ、主人公が「料理は愛情」などの言葉に反発しながら、料理以外のことがらで自分を磨き何かに打ち込もうとすることも、自分の好きなことやりたいことを見つけることも、自分をアピールできることを見出すこともなく、ただ料理が苦手なことの言い訳と正当化を試みてはムダに挫折して苦しみ続け、言うことは中身のない真島のコピーだったりする様は、読んでいて入り込みにくく虚しく思えました。イヤなものはイヤ、いい人だから好きになれるわけじゃない、無内容な人物でも好きになったのは仕方ない、そういう主張はそれはそれでいいけれど、また人生は往々にしてそんなものだけど、小説では、それならそれでほかの領域で何か打ち込めるもの、夢中になれるもの、詳しくハイレベルなことを書き込めるものを打ち出して欲しいと思います。
主人公の勤務先の1年後輩の坂間が、ハムスターのつがいを飼ったら、リンゴとスターと名付けるのが中2のときから夢だった(73~74ページ)って、(2010年頃に中2だったことになるはずですが)一体どういう中学生だったん?
佐々木愛 文春文庫 2023年5月10日発行(単行本は2021年1月)