伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

令和5年版やさしくわかる給与計算と社会保険事務のしごと

2023-06-29 22:48:55 | 実用書・ビジネス書
 会社の総務・会計が日常業務として行っている給与計算、源泉徴収、社会保険料の控除・納付、年末調整等の事務について解説した本。
 給与からの税金・社会保険料控除は、健康保険・介護保険・厚生年金が原則として4月・5月・6月の支給総額(交通費・残業代含む)平均をもとに標準報酬月額を決定して保険料を定めて9月分から翌年8月分までを毎月控除し翌月末までに納付、雇用保険料は支給総額(交通費・残業代含む)の0.6%を当月分から控除して納付は労災保険料とともに年1回概算前払いで年度末に精算、所得税は総支給額から非課税交通費と社会保険料控除後の額と扶養家族数をもとに税額表で源泉徴収額を決定して毎月控除して翌月10日までに納付した上で年末調整、住民税は前年の給与支払報告書に基づいて役所から送られてきた額を6月分から翌年5月分まで毎月控除して翌月10日までに納付という、制度ごとにバラバラで面倒な事務が課され、全国の会社で膨大な労力が割かれています。
 この本では、それらを含めた給与計算等の事務の基本を説明し、後半では年間スケジュールに沿って必要になる事務を紹介しているので、イメージとしてもわかりやすくなっていると思います。
 他方で、時間外・休日労働の割増賃金率を、時間外は「2割5分以上5割以下」、(法定)休日が「3割5分以上5割以下」と書いている(57ページ)のは、おそらくは労働基準法第37条第1項で割増率を政令で定める際の限界を規定していることを誤解しているものと考えられ、政令で時間外は25%(月60時間超は50%以上)、休日は35%と定めているのですから、使用者に命じられているのは時間外が25%以上、休日が35%以上(「以上」となるのは労働基準法が定めるのは最低基準のため)と説明すべきで、「5割以下」という説明をするのは誤りです。また、年次有給休暇について、法律上は入社後6か月で(8割出勤すれば)10日付与され、そのまま運用すると各労働者の入社日ごとに年休を管理することになって煩わしいために基準日を設けて斉一的取扱をする会社が多いという説明で、4月1日を基準日としてすべての社員に年次有給休暇を与えるとしている(108ページ)のは、それでは4月2日から9月30日までに入社した労働者にとって労働基準法より不利になるので法律違反となってしまいます。そういう辺り、労働基準法の理解が危ういところを感じ、「毎年絶大な支持」があり(はしがき)、16版にもなっている専門家の手による実務書がこれでいいのか、やや不安を覚えました。


北村庄吾 日本実業出版社 2023年5月1日発行(初版は2001年7月20日)
コメント (1)
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