伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

クリーム・ソーダ上下

2008-07-19 03:31:48 | 小説
 その場で気に入った男との一夜限りの関係を繰り返す超尻軽女子大生桃ちゃんが、合コンで知り合ったレン君に一目惚れして改心し、突然レン君一筋になって若干の障害を乗り越えて恋を成就させる恋愛小説。魔法のiランド大賞2007優秀賞受賞のケータイ小説の単行本化。
 ライバルは桃ちゃんの大学同級生で顔もスタイルも上で性格が悪いユカリ。それでも最後には主人公が勝ってしまう、それも自分が一目惚れした相手が実はそれ以前に自分に一目惚れしていたという信じがたいほど都合のいい少女漫画的妄想ともいうべき設定。ありがちな設定ですしそれが売れるわけだからそういうニーズ多いんでしょうね。男をとっっかえひっかえし、素直じゃないし、桃ちゃんだって性格がいいとは言えないんですが、主人公の場合気にならないんでしょうね。まぁお互い一目惚れな訳で性格関係なしに好きになったともいえるのですが。そういうのが理想のカップル像になるのって、おじさんにはちょっと哀しい。


さぉたん アスキー・メディアワークス 2008年4月25日発行
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生命保険の闇

2008-07-18 00:44:32 | 実用書・ビジネス書
 生命保険がいかに保険会社に有利にできているか、魅力的に聞こえる保険会社の誘いがいかに加入者に損をさせることになるかを説明した本。
 タイトルからは保険会社の裏側の暴露本のように見えますが、そういう話はほとんどありません。
 著者の主張は、むしろ通常の人にとって生命保険が実はいかに必要ないかということ、生命保険の保険料を払うくらいならその分を貯蓄に回し、また余裕を持った生活をし家族団らんに当てた方がよほど有意義な人生を送れるし、結果的に貯金も貯まるということに力点が置かれています。貯蓄型の生命保険よりも掛け捨ての保険に入って差額を貯金した方が、貯金も貯まるし保障も有利という話を聞かされると、生命保険って何だったんだろうと思ってしまいます。ましてや掛け捨ての保険も生命保険会社でなく共済組合の方が有利となると・・・


藤原龍雄 フォレスト出版 2008年3月17日発行
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恋人

2008-07-12 00:02:13 | 小説
 勤めたばかりの会社を辞め母親が病に倒れても故郷に帰らず語学学校に通いながらものになる見込みもなく小説を書き続ける主人公が、語学学校で出会った離婚したての年上の編集者女性と語り合うようになり、相手が別れを伝える際に言った30年後のクリスマスに女性の故郷の函館で会いましょうという言葉を支えに様々な仕事をしながら小説を書き続け、小説家になり、約束の日に函館にやって来るというストーリーの小説。
 仕事を辞めて小説を書くというのになぜ語学学校に通うのか、建設現場で働きながら片手間に小説を書くのならなぜ故郷で書かないのか、相手の女性との別れも主人公が女性の体の傷にひるんだ/無神経に見つめ続けたためなのになぜ自分が捨てられたような被害者的な感情を引きずり続けているのか・・・。自伝なのかどうかよくわかりませんが、どうも作家が小説家志望者の話を書くのを読むと、自己憐憫と自己陶酔と自己卑下と自虐的露悪的なしかし言い訳めいた物語に感じ、楽しめません。
 恋愛ものとしても美しいラブストーリーではありません。構成はそれなりに引き込む力がありますが、恋愛ものとしてみても作家ものとしてみても、70年代っぽい重苦しめの少しじめっとした感じ/でも本当の70年代作品ほど重くない作品で、いまどきの70年代ノスタルジーというところでしょうか。


佐藤洋二郎 講談社 2008年3月26日発行
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大人の合コン力検定

2008-07-11 20:47:44 | 趣味の本・暇つぶし本
 合コンのシチュエーションごとに110問の質問に3択の回答を続けて採点し、合コン力を測るという形式の暇つぶし本。
 前半は段階別に前半戦、後半戦、2次会、後半は「ビジネスに役立つ7つの合コン力」とかで攻め込み力、アピール力、持ち上げ力、ムードメイク力、切り替え力、チームワーク力、ドタンバ力、最後に卒業試験が各10問。それぞれの質問の解説で合コンや女心について著者の考えを語り、女性の歓心を買うには何を考えるべきかを論じています。
 基本的には軽いエッセイ・冗談本として読む本です。出版社の思惑か、ビジネス力の向上にも役立つ(帯は「合コンを制す者は、ビジネスを制する」だとか:58頁)としているところに無理があり、それを取り繕おうとしている説明が痛々しい。


石原壮一郎 ソフトバンククリエイティブ 2008年5月9日発行
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破産者オウム真理教 管財人12年の闘い

2008-07-11 20:07:18 | ノンフィクション
 多数の殺傷事件を起こした犯罪者集団オウム真理教の解体と被害者救済のために被害者と国が申し立てた破産手続で、破産管財人となってオウム真理教の施設からの信者の立ち退き、施設の解体と売却、後継団体からの賠償金取立等の業務を行ってきた著者の12年にわたる異例づくめの破産管財業務を綴ったノンフィクション。
 凶悪事件の記憶も生々しいスタート時点では後難を恐れて貸し手が現れず破産管財人事務所の確保にも苦しんだ様子や教団施設に乗り込み信者と渡り合う様子、施設の解体では毒物や武器を始め何が隠されているかわからない施設を解体して無事に売却するための苦労、それも高額の解体費用を捻出する苦労などが切々と描かれています。
 居座る信者や施設を覆う凶悪事件の記憶と毒物などの存在が、通常の破産事件では想定できないような障害となっていたことが改めてわかります。
 その障害を卓越した決断力と創意で乗り越えてきた管財人、それも日弁連会長経験者というお偉方が、数々の障害を乗り越えたエピソードを書く度に自分の手柄よりも関係者の協力への感謝を書き記している腰の低さにも感じ入りました。


阿部三郎 朝日新聞出版 2008年6月30日発行
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未来予想図~ア・イ・シ・テ・ルのサイン~

2008-07-08 23:34:08 | 小説
 意地っ張りでまわりのことが見えてないのに自分の大事なことも伝え損なう雑誌編集者宮本さやかとガウディに憧れる少年の心を忘れない建築士福島慶太のラブストーリー。
 大事な相手に大事なこと・感謝をきちんと伝えようというさやかの母の言葉が、割りとシンプルにメインテーマになっています。
 父の死ぬ前にも母の病気前にも、そして慶太にも、意地や忙しさで大事なことを伝え損ねたさやかが、雑誌の取材で「恋がかなう花火師」の頑なな心を溶かしていきながら自分も変わっていく様子を軸に、すべてを集めてハッピーエンドに突き進んでいきます。ハッピーエンドが待っていないのは、娘に喧嘩を売れられたまま死んだ父親だけ。こうなるとお父さんが可哀想な感じも・・・。
 サグラダ・ファミリア教会前での再遭遇とか、ましてや終盤で明かされる慶太の少年期とさやかのエピソードなんて、小説ですから劇的にというのはわかるけど、やっぱり、世界に人間は100人くらいしかいないのかクラスの無理を感じます。深く考えずに気持ちよく読めればいいじゃんって人向けの都合いいラブロマンス・エンタメです。


志羽竜一 メディアファクトリー 2007年9月21日発行
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人くい鬼モーリス

2008-07-07 08:05:03 | 物語・ファンタジー・SF
 女子高生信乃が、夏休みの家庭教師をすることになった超美少女小4芽理沙と、芽理沙が別荘の納屋で密かに飼う大人の目には見えず動物・人間の死体を食べる怪物モーリスの秘密を共有しながら、次々と起こる関係者の死と死体の消失事件に巻き込まれるミステリー小説。
 モーリスの名はモーリス・センダック作の絵本「かいじゅうたちのいるところ」のイラストの怪獣に似ている(黄色い目、大きく裂けた口、干し草のような髪)ところからだそうです。
 高校生少女と小学生少女、怪物の心情交流の物語と、殺人事件ミステリーが交差して展開されますが、どうしてもミステリーの方がストーリーの柱になり、モーリスは攪乱要因の性格が強くなって、私としてはちょっと不満足。それからミステリーで犯人候補を増やすために登場人物を増やし過ぎて物語としては焦点がぼける感じもします。ミステリーとしてみると、モーリスという不思議な生物の存在での攪乱がなかったら、トリックとしての工夫も乏しい感じですし。
 殺人事件がらみにしないで、不思議な怪物と少女の心情と成長、友情のお話で進めた方がよかったように思います。そっちの方が思春期にかかる少女の思いと成長を美しく描けたのではないでしょうか。


松尾由美 理論社 2008年6月発行
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キララ、またも探偵す。

2008-07-06 14:01:35 | 小説
 オタク学生のところに従兄の研究者から超美少女メイドロボット試作品キララがモニターのために送られてきて、何でも言うことを聞くメイドロボット、同級生女性、前作(2007年2月26日の記事で紹介)でキララの活躍で仲良くなった美少女アイドル、グラマーなロボット研究者に囲まれ、オタク学生がもてあそばれながらいい思いをするというアキバ系オタクの妄想全開のミステリー。
 単行本も2冊目になり、ネタも尽きてきたのか、2話目は主人公を同級生女性に変え、ミステリーとしては普通に読んでれば見え見えの展開。まぁ、ミステリーとして読んでいる人は少ないでしょうけど。3話目に至っては、まるっきりポルノ小説。ミステリーとか、探偵とかを装うこともばかばかしい状況です。
 別冊文藝春秋ってこういうの読む人たちが読者層なんでしょうか。


竹本健治 文藝春秋 2008年5月15日発行
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西の魔女が死んだ

2008-07-05 21:57:32 | 小説
 不登校の中1少女まいが西の田舎で暮らすイギリス人祖母の元で田舎暮らしをしながら立ち直るハートウォーミング系の青春小説。以前読みましたが、映画化されたので再読しました。
 祖父が死んで1人で山の中で暮らすイギリス人祖母という、少し異界の雰囲気の中で、昔の生きるための自然に対する知識を持つ「魔女」の存在と予知のエピソードを使いながら、まいの心を巧く解きほぐしていくおばあちゃんの知恵と、それに乗せられながらいつかそれに気づくまいの成長のやりとりが読みどころです。魔女は、自分で決める、決めたことを実行する、外からの刺激に動揺しない(心から聞きたいと願った以外の不思議な体験は無視すべき)・・・たぶん同じことを親から言われても聞く耳持たないことでも、このシチュエーションで聞かせてしまうところなんですね。「おばあちゃんはいつもわたしに自分で決めろって言うけれど、わたし、何だかいつもおばあちゃんの思う方向にうまく誘導されているような気がする」という終盤のまいの台詞とあらぬ方向を見つめてとぼけるおばあちゃん。ここが一番巧い気がします。
 イギリス人女性、それも元英語教師に「女の人は家にいて家庭を守るべきだ」という考え方をさせ、結局、母が仕事を辞めて親子3人父親とともに暮らすという解決策に進むあたりが、保守的な価値観を体現していて(まぁ母親の抵抗も描いてはいますが)、ちょっと違和感が残ります。


梨木香歩 小学館 1996年4月20日発行
(最初は楡出版1994年、現在は新潮文庫)
児童文学者協会新人賞、新美南吉児童文学賞、小学館文学賞
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この世の全部を敵に回して

2008-07-04 20:55:19 | 人文・社会科学系
 人間にとって絶対的なものは死だけでそれ以外は相対的なもので死に比べれば何ほどでもないという命題から出発してあれこれ思索する人生論ないしは哲学本。
 タイトルがすごく大仰ですが、家族も愛していない、人間は別の人間を信ずるという能力が最初から欠落しているなどとニヒリズムに走り憎まれ口を叩き続ける展開から、著者はそういう覚悟なんでしょうね。ただ、それなら正面から人生論として書けばいいものを、他人から預かった原稿だとかいう設定にして、その人の人生を設定して、内容には自分も異論はあるとか(7頁)、逃げ腰のいいわけを書きすぎていて、それが著者の姿勢を疑わせます。
 前半の死と宗教をめぐる議論は観念論ですが、それなりに興味深く読めます。不死が実現すれば人生のほとんどの問題は解決するとかいう展開は、人間が人間でなくなればというのと同じレベルの夢想で観念の遊びですけど。
 後半で異常性欲者に我が子を殺された親の立場から犯人が死刑にならない法制度を批判し、復讐が禁じられていることは不合理だとか、被害者の親は犯人の娘を強姦することで始めて犯人に同じ苦しみを味わわせることができるとか言って司法制度を批判するあたりはもう支離滅裂。だいたい前半では家族が死んでも本当に哀しくはないとか言ってたわけで、前半のトーンからしたら子どもが死んでも実は大して哀しくない、復讐に人生をかけるなど無意味だとなるはずです。それが、昨今の風潮に乗っかった犯罪者・弁護士批判になると、そんなこと忘れたように我が子を殺された親の哀しみ・怒りが強調されています。
 一応業界人として指摘しておきますが、「心神耗弱」で無罪(98頁)はありません。無罪になるのは心神喪失です。


白石一文 小学館 2008年4月28日発行
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