伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。今年も目標達成!

ここが変わった!!住民基本台帳の閲覧・住民票の写し等交付制度

2009-06-12 20:31:53 | 実用書・ビジネス書
 住民基本台帳の閲覧についての2006年実施の法改正と住民票請求についての2008年実施の法改正についてQ&A形式で解説した本。
 役所の担当者向けに、窓口職員が住民からこう聞かれたらどう対応すればいいかってことを、いかにもお役所の論理で説明しています。一般人に読み通せるタイプの本ではありません。
 個人情報の保護をいいながら、お役所が管理する住民基本台帳(住民の住所・氏名・性別・生年月日の一覧表)の閲覧や住民票の交付は、改正前は法律上は誰でもできる状態でした。
 それを住民基本台帳の閲覧は公益性が高い調査等の場合、住民票の交付は(本人や家族の場合以外は)自分の権利行使等の正当な目的がある場合等に限定したわけですが、金貸し(ヤミ金も含む)が借り主の住民票を請求するのは常に自分の権利の行使のためになるのでやり放題。その場合、「債権発生原因である契約書等の写しの提示又は提出を受けることにより、債権が存在する(していた)ことを確認すれば、それで足り、弁済の有無の確認までは求められないと思われます」(176ページ)、つまりそれが実は全額支払い済みであろうが過払いであろうが時効で支払義務がなくなっていようがそこは全くノーチェックで住民票を出せということだそうです。
 自衛隊地方協力本部が自衛隊員募集のために住民基本台帳を閲覧するのは全くフリーパスでいいそうです(33ページ)。
 個人情報の保護のための改正ですが、やはりお役所によるお役所のための制度って感じですね。


市町村自治研究会 日本加除出版 2009年3月24日発行
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もしも、この世に天使が。《青の章》

2009-06-10 01:12:40 | 小説
 両親の離婚で飼い犬のシロと暮らせなくなったことを理由に、シロと一緒に暮らすため北海道の祖母の元で暮らすことにした中学2年生の少女上村亜央(あお)が、学校のグループリーダーで親友の沙樹の意中の人にして祖母の仇敵の孫である高校生和久良真と恋仲になる青春恋愛小説。
 第1巻の《青の章》は、北海道に移住した亜央が真と知り合い恋仲となるが、夜中に会いに行ったことが祖母や教師の知るところとなり、交際を禁じられるが夏休みに2人で札幌に行きラブホに入るも祖母が倒れたことを知り急遽戻るところで「つづく」。う~ん、いかにも昔の安っぽいメロドラマみたいな引きですね。
 まぁ、恋は盲目、ですが、そして中学生ですから、周りが見えないのもわかりますが、それにしても「親友」の沙樹の意中の人だって見え見えなのに、沙樹が大人ぶって気にしないふりしてるのが見え見えなのに、これだけ遠慮なく奪いますか。しかも、世話になっている祖母が死んだ祖父の恨みと、忌み嫌っている仇敵の孫で、それだけはやめてくれと言っているのに、祖母に隠れ騙してまで会いに行きますか。それで自分たちが迫害された被害者のように振る舞いますか。「空気が読めない」レベルじゃなくて自分のこと以外何も見えてない、考えてないって感じですね、この人。作者がどう展開するつもりか知りませんが、真の方は気が多く、亜央のことは憧れの大都会東京から来た娘への好奇心と憧憬と体目当てと見えますけどね。
 人に知られないようにと「ブランカ」と「ロボ」と呼びあう交換日記、第1回の内容だけで地元の人はだれが書いてるか100%わかると思いますが、これで当人は秘密が守れると思ってるところが、周りの見えてない2人を象徴してるのでしょうか。


山田あかね 講談社 2008年11月10日発行
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大人のジョーク

2009-06-08 23:43:00 | 趣味の本・暇つぶし本
 基本的に下ネタと結婚と妻への絶望をネタにしたジョーク集。
 出典も初出も書いてありませんので、著者のオリジナル書き下ろしでしょうか。
 最初から日本人が日本語で考えたにしては翻訳物のような違和感を感じる部分もあり、今ひとつ笑いのツボにはまらない感じがしました。
 特に続けて読み通すと、いかにも思考パターンがワンパターンですので、先が見えてしまいます。この種のものは、雑誌かなんかに1つ2つ挟まれていてこそ価値があるのかなと思いました。
 若い男が自分の父親が牧師だから結婚するのは簡単と口説いたのに、相手の女性が「じゃあ、結婚してみましょうよ。私のパパは弁護士なの」(61ページ)というのは、仕事がら身につまされますが。


馬場実 文春新書 2009年4月20日発行
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毒と人体!

2009-06-08 23:16:24 | 自然科学・工学系
 毒と薬、麻薬等の人体への影響について解説した本。
 毒と薬は相対的で、毒も使いようで薬になるし、あらゆる生物に共通の毒はなく人間にとって毒でも他の動物には毒でないとか逆もあるというようなことが最初に説明されています。猛毒で有名なトリカブトは優れた鎮痛作用や強心作用がある漢方薬「附子」として利用される(19~20ページ)とか、わさびの香り成分がゴキブリにとっては強力な神経ガスになりコレラ菌やチフス菌やゴキブリが簡単に死んでしまう(80~81ページ)とか。
 アルコールは人体には毒として認識され、3割は腸まで行かずに胃で吸収されて直ちに肝臓に送られて分解されて腎臓に送られて排出され、その際アルコールとともにある水分も同じ道を辿るため、水分を取っているのに体は脱水状態になるのだそうな(56~60ページ)。それでお酒を飲むと夜喉が渇くんですね。
 喘息を患った人が田舎に行くと快癒するのは、田舎の空気がきれいだからではなく田舎は菌や病原体がたくさんいてそれに対抗するために免疫力や自然治癒力が向上するために喘息も治ってしまう(28~29ページ)っていうのは、そうかも知れませんが、自動車排ガスとかの原因物質が減少することを無視して議論していいのかなぁという気がします。


加藤雅俊 メディアファクトリー;ナレッジエンタ読本 2009年3月31日発行
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ドキュメント長期刑務所

2009-06-06 19:52:09 | ノンフィクション
 刑期8年以上で犯罪傾向の進んだ受刑者が収容されるLB刑務所での受刑者の生活等をレポートした本。
 著者は2人殺害で無期懲役となり20年在監しているそうです。
 私たち弁護士にとっても判決確定後の受刑者の生活は、直接見聞きすることは少なく、こういった本の情報は貴重です。
 2006年の改正監獄法施行で、面会や手紙の制限が大幅に緩和されたり、日常生活の厳しすぎる規制が緩和された様子が事実として書かれているのをみるとホッとします(一方で、著者はそのために刑務官に楯突く受刑者が増えて刑務所内の規律が緩みすぎていると苦言を呈していますが)。
 暴力団でも組のために体を張った受刑者は掟や暴力団の世界を別にすると情けがあり道理もわきまえているが、強盗殺人や強姦殺人の受刑者は他人の感情や心を忖度する能力に欠けている、障害者が頑張って生きたり子どもが不治の病になるようなテレビ番組を見ると組のために体を張った受刑者は泣くが強盗殺人や強姦殺人の受刑者は泣かず「早く死んじゃえ」とか言ったりする(81~82ページ)とか、2006年から差し入れで色つきのシャツが可能になった際に受刑者は自分の都合や欲望のためには常識や礼儀など持ち合わせない人が多いのであまりつきあいのない人にいきなり手紙で頼み送ってこないと勝手に恨むという人が多かった(176~177ページ)とか、やっぱりそうだろうなとは思います。
 受刑者のベテランには処方された薬を配合して特殊な薬を作り、これがよく効くという話(風邪薬で鼻づまり用が「天使の微笑み」、解熱用が「悪魔の囁き」、喉の炎症用が「天国への階段」と名付けられているとか:61~62ページ)とか感心するエピソードもちらほら。
 著者の姿勢として、基本的には処遇に満足している、刑務所のルールを守らない受刑者にはもっと厳しく指導して規律を維持すべきというのが目につき、検閲や今後の処遇の関係でこういう書き方でないと出版しにくいのかなと思いました。そのあたりは割り引いて読んだ方がいいかと思います。


美達大和 河出書房新社 2009年4月30日発行
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「やわらか脳」をつくる11のコツ

2009-06-05 22:36:05 | 実用書・ビジネス書
 人の性格・行動パターンの変わりやすい部分と変わりにくい部分を説明して自己変革のための小さな実践を勧める本。
 著者は学者さんですが、文章は自己啓発セミナーのインストラクターかと思うような読みやすさと調子のよさがあります。
 人の性格のうち新規探索傾向(新しいことをやって見たがるタイプ)と損害回避傾向(経験のないことはしたがらないタイプ)は遺伝的影響が強いそうです。「お人好し」度(この本では「報酬依存」と書いていますがそれではわかりにくい)とねばり強さも遺伝的影響が強いとか。
 それでも環境の影響もあり、そういった性格やもともと環境による影響の強い「上昇志向」や「協調性」を変えていくためには、新しいことをする、他人のいいところをまねる、口癖を変えるなどの小さな実践を続けて自信を育んでいくのがいいと、著者は勧めています。口癖を変えるは、否定的なことをいう代わりに、やってみなければわからないなどと口に出すことでその気になり脳が騙されるのだそうです(101ページ)。そのあたりの小さな実践感覚が面白い。早寝早起きをして無駄なことをしている時間を減らしその分健康にもよく新しいことに取り組める(86~89ページ)・・・わかるんですが、なかなか・・・
 性格を変えるためには「やわらか脳」が大切で、ここでいう「やわらか脳」は問題の処理のために決まり切った回路だけではなくいろいろな回路を使えることだそうです。「引き出しが多い」という言い方をよくしますね。そのためにもおっくうがらずに新しいことにチャレンジして人と積極的にコミュニケーションをと提案しています。
 結局、勧められている実践の内容は目新しいこともなく驚きもありませんが、どこまでが遺伝かとかの脳科学の話をお手軽に読めるあたりが少しお得感があるというところでしょう。


石浦章一 李白社 2009年3月29日発行
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日本とアメリカ 2 日本は生き残れるか

2009-06-05 00:55:51 | 人文・社会科学系
 2008年放映のNHKスペシャル「日本とアメリカ」の単行本化。
 放映はこの2巻に書かれている3本が2008年1月~2月で、1巻に書かれた3本が2008年10月~11月で、2巻の方が先。順序を放映と逆にしたのは、出版にタイムリーなオバマ絡みの話題を先にしたかったからでしょうか、それとも2巻の刺激的なテーマを慎重に調整したかったのでしょうか。
 2巻は頭からミサイル防衛を旗頭にして一体化が進む米軍と自衛隊を扱っています。情報共有と自衛隊情報の提供、軍需産業の共同技術開発でミサイル防衛が成り立ち、米軍と自衛隊、日米の軍需産業の緊密化が既成事実化していることが語られています。さすがにここまで微妙なテーマになると、この本でも、国民に十分な情報が提供されているだろうかと、最後の方で少しは疑問を呈しています。
 続いて登場するのは日米貿易摩擦・交渉でアメリカ政府を先導した在日米国商工会議所(ACCJ)。ここでも、さすがにACCJを全面的に賞賛するのは恥ずかしいのか、「ときにはあからさまともいえる容貌・提言を行っている」(80ページ)、「レイク氏の主張を全面的に受け容れることには私たちにも抵抗がある」(100ページ)と批判的な言葉も混ぜてはいますが、全般的にはACCJの正しさ、公平さ、代表のレイク氏の人間味といった面がかなり強調されています。そのレイク氏がUSTRの官僚として日米保険協議を先導しアメリカの保険会社の利益を守り(日本に規制緩和を要求しながらアメリカの保険会社が強かった分野では新規参入規制緩和に反対し)その後アフラックの副会長になったことも「偶然」だとかで批判的な言葉は全く見られません。
 1巻ほどの手放しのすり寄りぶりではないとしても、このテーマで自衛隊と軍需産業、ACCJをここまで持ち上げられると、ため息つきたくなります。
 どうしていいかわからなくなったのか、あとがきは様々な傾向の「論客」の意見を羅列して、何が言いたいのかわからない形で結んでいます。ここはやはり「みなさまのNHK」なんでしょうか。


NHK「日本とアメリカ」取材班 NHK出版 2009年3月25日発行
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日本とアメリカ 1 日本は逆襲できるか

2009-06-03 22:38:43 | 人文・社会科学系
 2008年に放映されたNHKスペシャル「日本とアメリカ」を単行本化したもの。
 日米同盟重視の「一体化」戦略とアメリカ側の中国・インド重視:ジャパンパッシングと日本側の嫌米・ナショナリズムといった「空洞化」が同時進行する中で日米関係の最前線を探るという企画だそうです。
 1巻ではアメリカ大統領選挙中の両陣営への日本外務省のロビイング工作、東芝のウェスチングハウス買収を代表例としてグローバル化を図る日本企業の経営戦略、日本アニメのハリウッドとの攻防を扱っています。
 外務省や原子力産業といった政治問題を取りあげていながら取材対象への手放しに近い賞賛が目につきます。本文もそうですが、あとがきで「私が今回シリーズの取材を通じて感じたのは、外務省や防衛省、自衛隊の幹部や政治家たちが何も好き好んで追随を目指したわけではない、ということだった。」(238ページ)としてアメリカから自立して対等の関係で防衛を考えていくための「一体化」を評価しています(一応、危険はないかとか議論の必要性があるとか言っていますが、軸足が防衛省側にあることが強く感じられます)。東芝のウェスチングハウス買収では、原子力発電所の危険性や放射性廃棄物問題などはもちろん一言も触れず、東芝の技術の安全性・信頼性ばかりが語られています。それだけでなく、アメリカ企業の買収の背景として、日本企業が「3つの過剰」と言われた設備・雇用・負債の過剰解消に必死で取り組んできた結果財務体質が改善したことを挙げて賞賛しています。そのリストラの嵐のおかげで貧困層が拡大し、企業にとっても国内市場がやせ細り不況から脱出できないことにも何の言及もありません。あとがきで、オバマ政権がブッシュ政権の富裕層優遇をやめて教育と社会保障の充実で経済の底上げを図ろうとしていることをアメリカの学者に語らせて少しだけフォローしていますが(それでも企業のことは批判していません)。
 NHKの中にも様々な人たちがいることの反映でしょうけど、政治問題絡みのテーマの取材にしては、政治・経済のエスタブリッシュサイドへのこの手放しの追従ぶりは、私には驚きでした。


NHK「日本とアメリカ」取材班 NHK出版 2009年2月25日発行
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