伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

販促 鉄板ワザ

2009-11-14 01:58:47 | 実用書・ビジネス書
 1時間で手っ取り早く売上を伸ばすネタ帳というベタなキャッチコピーの販促ビジネス本。
 前書き冒頭の「最初に断っておくが、本書はあまり深く考えて読む本ではない。」という潔さに、つい惹かれてしまいました。
 中身は、まぁそうだろうけどという羞恥心や見栄を捨てて販売促進に励もうって感じの内容ではありますが、提案自体は極めて具体的即物的でわかりやすい。
 最後の方で、ネットビジネスに見切りをつけろというアドヴァイスは、ちょっと意外。「ネットビジネスが弱者の味方という時代は終わり、強者がさらに売上を伸ばす販促ツールへと変わってしまった」(242ページ)、ネットビジネスにかかる様々な経費で赤字を垂れ流しているケースは多いという指摘は、考えさせられます。すぐに捨てられるような販促物(アメ玉とかティッシュとか)を配布して社名が入ったものを使い捨てだと思われるのは販促物として逆効果(63~64ページ)というのも、なかなか考えさせられます。


竹内謙礼 中経出版 2009年9月11日発行
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トラム、光をまき散らしながら

2009-11-13 23:56:07 | 小説
 母親タエコが夫タツローを交通事故で失った1週間後に18歳で生んだが早産のためその日に死んでしまった双子の姉妹麻理と杏奈の名前を乗せられて「麻理杏奈絵里」と名付けられた、父親のわからない中2の少女が、母が帰らぬ日々を都電に乗って過ごすうちに知り合った高校生のマリアンナと過ごし、喜怒哀楽をぶつけながら前向きになっていく青春小説。
 泣いてばかりいる母親タエコに涙を見せず母親を慰めるマリアンナエリの気丈さ、そんなマリアンナエリがマリアンナに出会って始めてみせる涙、友だちができず疎外されて孤独に街をさすらうマリアンナエリとマリアンナの姿・・・読んでいて切なくなるシーンが続きます。都電を「光の箱」と見るマリアンナエリの心情にもそれは現れています。
 出会えた2人の喜びと、思わぬ秘密の発覚と友を傷つけてしまった哀しみに揺れる心、そういったところも含めて切ない思いの方が中心になるけど、でもピュアな気持ちになれる作品だと思いました。


名木田恵子 ポプラ社 2009年10月発行
コメント (2)
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5秒であなたは熟睡できる!

2009-11-09 22:20:12 | 自然科学・工学系
 医師の立場から熟睡するための条件と睡眠の効用を説明した本。
 まるで「ドラえもん」ののび太のようなタイトルは、著者自身、本文でも「5秒間入眠も・・・工夫をこらし、条件さえ満足させれば、誰にだって可能になる」(44~45ページ)と書いていますから、出版社が勝手につけたのではなさそうです。
 たぶん、細切れに執筆したものと思われ、同じことの繰り返しが多く、読み物としての流れが悪く、軽い文章の割に読みにくい感じがします。前半では8時間睡眠には根拠はないと短時間熟睡を勧めながら、後半では脳のためには熟睡5時間が必要でそのために睡眠は最低7時間必要と言ってみたり(168ページ)。
 そういうところから雑な作りの本だと感じますが、面白いことがけっこう書かれています。眠る態勢にするためには副交感神経が優位の状態にすることが大切だということが強調され、意図的に副交感神経が優位の時の体の状態、例えば瞳孔の収縮、毛細血管の拡張などを作り出すことで眠気が訪れるとしています。眠れないときは暗くするよりむしろ明るい光を見続けることで瞳孔が否応なく収縮し副交感神経が優位になって眠くなる(73~75ページ)とか、手を温めたりマッサージでこりをほぐして血管を拡張することで眠くなる(81、85~86ページ)、さらにはペットをなでると掌の快感で眠くなる(78~80ページ)って、へ~っと思います。脳細胞間の情報伝達物質を構成するタンパク質は熟睡中に再合成される速度が上がる(165~167ページ)そうで、睡眠は脳を休めるだけでなく、機能の活性化を促進することにもなるようです。そういう情報の断片として興味を感じさせる本でした。


松原英多 KKロングセラーズ 2009年9月1日発行
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碧空の果てに

2009-11-08 23:33:34 | 小説
 大陸の盆地にある平原に分立する小国の均衡が西方の大国アインスの侵略に脅かされている状況の下で、東北の小国ユイの王女メイリンが17歳の誕生日を前に馬を駆って国を出奔し、アインスに屈せずにいる選挙で首長を選ぶ自由の国シーハンを訪れ、機知に富むが冷徹な首長ターリの下で従者としてターリを支えながらターリを励まし民衆と心を通わせ明るさを取り戻させつつともにシーハンの野望を押し戻し、メイリンはシーハンで生きる場所を見出していくというファンタジー。
 設定とか固有名詞とかに「守り人シリーズ」の影響を、私は感じました。
 ストーリーでは、メイリンが助けたロロの兄で議員のフェイエとターリとメイリンの三角関係、メイリンを慕うロロとの関係といった人間関係ドラマとしての側面と、シーハンの侵略を狙うアインスの王やそれと通じるシーハンの勢力に対するターリの分析と戦略、そこで意見を戦わせるメイリンやフェイエという政治ドラマの側面があり、いずれの面でもそれなりに楽しめます。
 怪力の馬使いというメイリンの設定と車いすの首長というターリの設定、高い能力と意欲を持つメイリンの生き様という面、背景として問題提起され続けた女性の参政権というテーマから女性解放ドラマとしても読めます。


濱野京子 角川書店 2009年5月30日発行
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ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない

2009-11-07 21:05:10 | 小説
 高校中退で引きこもってNEETしていた「マ男」が母親の事故死を契機に一念発起して基本情報技術者資格を取りプログラマーとして就職したが、その就職先が半端でない残業量と異常な人々ばかり(ひとりだけ有能な人格者がおり、社長は優しいが)という状況で苦しみながら一人前になっていく様子を描いた小説。
 なんとか生き残り実力も付いてきたが入社して3年目で衝撃的なできごとがあり限界だと言ってこれまでのことを「2チャンネル」でスレッドを立てて語り続けたところに多数の2チャンネラーの反応があり、それを出版したそうです。2チャンネルの書き込みそのままの形式なので、小説としてストーリーを追うにはちょっと読みにくい。
 序盤は労働条件の厳しさが強調されていますが、次第に職場での人間関係に焦点が移って行きます。読んでいると、確かに酷い労働条件なんですが、労働相談受けてると現実にはこういう会社けっこうあるような。
 終盤になると、3年勤め続けた余裕というか慣れというか、書きぶりも落ちついてきます。タイトルに相違して、最終的なテーマは、むしろ「石の上にも3年」とも読めます。
 最後まで読むと、厳しい中にも労働の喜びが感じられ、他方そういうことでこんな会社を許していいのかとも思います。


黒井勇人 新潮社 2008年6月25日発行
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プラスマイナスゼロ

2009-11-05 22:31:49 | 小説
 神奈川県の田舎町葉崎山高校に通う成績・運動能力・容姿・身長体重何から何まで全国標準の「歩く平均値」崎谷美咲と成績優秀品行方正のお嬢様だが信じがたいほど不運な天知百合子(テンコ)と不幸な家庭環境に育った極悪腕力娘黒岩有理(ユーリ)の3人が、高校生活の中で巻き込まれる事件を描く短編ミステリー連作。
 基本的には、ミステリーとか謎解きよりも、次々とアクシデントに見舞われながら神は愛する者にこそ試練を与えるとのほほんとノーテンキしているテンコのお嬢様ぶりと、物事を度胸と腕力で解決したがるユーリのちょっと違ったノーテンキさの、キャラというか掛け合いのギャグで読ませる小説というべきでしょう。タイトルの「プラスマイナスゼロ」は、その3人トリオの両極端と平均値ぶりを示すもの。美咲がゼロなのは明らかですが、テンコとユーリはどっちがプラスでどっちがマイナスだか。
 連作のほとんどは美咲が語り手ですが、1つだけ美咲が語り手に見せて別人物が「わたし」だったというトリッキーな短編が入っています。もちろん、作者が意図したのでしょうけど、ちょっと戸惑いました。


若竹七海 ジャイブ 2008年12月13日発行
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錯誤配置

2009-11-01 00:58:03 | 小説
 精神科医でミステリー作家の主人公藍霄が、カフェで騒ぎを起こした精神病患者から、7年前に起きて迷宮入りしている女子学生殺人事件の犯行を告白した上で藍霄も関係しているなどという謎の電子メールを受け取り、その後その人物が殺害されたことから事件に巻き込まれ、友人の医師秦博士がその謎を解くという設定のミステリー。
 7年前の事件は密室殺人もので、その謎解きと、電子メールの作成者の謎と直近の殺人の謎を絡めたものですが、謎解き・どんでん返しというミステリーの醍醐味としては、ちょっと中途半端。
 犯人は確かに予想外ですし、最後にどんでん返しも用意はしてあるのですが、疑われているのが主人公で、探偵の友人ということですから、語り手自身が犯人という掟破りをしない限りは、7年前の殺人の設定がほころびていることが明らかでそこから密室ものとしてのほころびが見え犯人の特定はできなくてもおおよその方向性が見えてしまうこと、そして最後にもうひとひねりはありますが、ある意味そこは犯人はどっちでもいい感じで、やられたという感じになりません。それはそれとして一つのスタイルではありましょうし、トリック自体はよく考えられているのですが、謎解き情報の出し方にもう少しためが欲しかったなぁという感じです。


原題:錯置體
藍霄 訳:玉田誠
講談社 2009年9月10日発行 (原書は2004年)
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