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Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。俳句、写真、美術館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。労組退職者会役員。

三菱一号館美術館「画鬼・暁斎 幕末明治のスター絵師と弟子コンドル」(一)

2015年07月12日 23時32分15秒 | 芸術作品鑑賞・博物館・講座・音楽会等
   

 河鍋暁斎(1831-1889)という画家が、幕末から明治期にかけて活躍した多産でかつ型にはまらない、そして悪魔的な画風であるという評価だけは聴いたことがある。そしていくつかの作品も見たことはあるが、これだけ多くの作品を集めた展示は初めてである。
 有名なジョサイア・コンドルとの師弟関係については岩波文庫の「河鍋暁斎」(ジョサイア・コンドル著)でも明らかである。
 1881(M14)年の内国勧業博覧会の会場である博物館の本館を設計したのがコンドル。その会場の中心に貼られた「上野山内一覧之図」を暁斎が描き、さらに美術公募展に出品した「枯木寒鴉図」が絵画で最高賞となる妙義二等賞牌を獲得した。これがコンドルと暁斎を結ぶこととなる。

 今回の展示は
1.暁斎とコンドルの出会い-第二回内国勧業博覧会
2.コンドル-近代建築の父
3.コンドルの日本研究
4.暁斎とコンドルの交流
5.暁斎の画業
 5-1 英国人が愛した暁斎作品  5-2 道釈人物図  5-3 幽霊・妖怪図
 5-4 芸能・演劇        5-5 動物画    5-6 山水画
 5-7 風俗・戯画        5-8 春画     5-9 美人画
という構成になっている。

 今回はジョサイア・コンドルの事績、ならびに暁斎との交流については特に触れずに、共済の作品に絞って見て回った。多作で広いジャンルの作品を生んだ暁斎という画家の全貌を捉えるのはとても至難の業だと思う。
 いくつかの私が一瞥して気に入った作品を並べることで、感想に変えるしかないと思う。



★「枯木寒鴉図」
 第二回内国勧業博覧会で二等となった鴉の図。これまで図版でしか見たことがなかったので初めて実物をみた。そして頭部、特に嘴から眼にかけての生き生きとした写実に驚いた。黒目の周りの白い部分が効果的だ。このようなリアルな鴉は水墨画としては初めて見たような気がする。また尾羽の上に畳んでいる羽の質感にも惹かれた。
 ごつごつとした枝が何の枝かは知らないが、鴉一羽がこの画面におさまるのにふさわしい曲がり具合と位置を占めているように合点してしまう。左側と下部に占める余白も気に入っている。

 同じく鴉の作品が他に2点あった。



★「柿に鴉図」
 赤く熟れた柿を狙っている鴉に満月を配した鴉。この鴉も眼が異様に鋭い。黒目の周囲の白い部分がここでも目に生気を与えている。満月はかすんでいるが、柿と鴉の緊張関係を浮かび上がらせるのに効果的な位置にあると思う。
 解説によれば先ほどの賞を獲得したのち、暁斎の鴉図は大いに評判となったようだ。



★「二羽の泊鴉に山水図」
 こちらは柿の代わりに夕陽の赤と、樹木に寄生する植物の紅葉した葉を配している。鴉の下の景色は隅田川の西岸の浅草寺のシルエットらしい。威嚇している攻撃的な番の鴉であろう。先の二枚の作品の鴉よりもいっそう黒々として存在感がある。風景に溶け込んだ鴉ではなく、生命観溢れる鴉である。やはり嘴から眼にかけて、その黒目の周りの白に惹かれる。
 解説によればコンドルはこの絵を所蔵していたようで、最も優れたものとして評価している。この絵にある物語性にも注目しているのだろうか。コンドルの「河鍋暁斎」によると鴉の嘴と眼と同時に爪の描写にも注目している。
 解説では「宋末元初の水墨画家牧谿の影響を受けた長谷川等伯の水墨を想起させる」とある。この指摘は果たして妥当だろうか。等伯の「松に鴉・柳に白露図屏風」「烏鷺図屏風」を見てみたが、私としてはどのように共通項を見たらよいのか、迷っている。


キリコ「二房のブドウ」

2015年07月12日 19時28分24秒 | 芸術作品鑑賞・博物館・講座・音楽会等


 昨日横浜美術館を訪れて、ミュージアムショップを見ていたらキリコのポストカードを見つけた。輸入カードで「在庫僅少につき」ということでいくつかの作品と一緒にボックスに入れられていた。物色しているうちにだれの絵かもわからなかったが裏面をたまたま見てビックリ。ジョルジュ・デ・キリコとなっていた。
 不思議なことに製作年が記されていない。日本のカードならば作品名と製作年は律儀にほぼ確実に記載されている。私もどちらかというと制作年は気になって仕方がない方だ。
 この絵キリコの画風が確立される以前のように見受けた。たぶん初期の作品なのだろう。しかしこのような作品を作っていたのかと思うとなかなか興味深い。
 ただ上下の黄色の枠が何なのか、ちょっと不思議である。始めはお盆のようなものかとも思ったが、そうすると背景の赤と黄色は何なのだろう。日本の漆器でできたお盆なのだろうか。色彩的には赤と黄色の背景がブドウの微かな紫色と呼応して美しい。そこが気に入った。


「シャルフベック」展と「画鬼・暁斎」展

2015年07月12日 18時18分03秒 | 芸術作品鑑賞・博物館・講座・音楽会等
 昨日横浜美術館で蔡國強展「帰去来」とコレクション展「戦後70年記念特別展示 戦争と美術」を見てきたばっかりで頭の中の整理も何もできていないのだが、本日はこの暑さの中、東京芸術大学美術館「ヘレン・シャルフベック 魂のまなざし」展と、三菱一号館美術展「画鬼・暁斎 幕末明治のスター絵師と弟子コンドル」展を見てきた。
 7月中はあまり時間が取れないかもしれないと思い、少々慌てて出かけた。東京ステーションギャラリーで開催している「鴨居玲 踊り候え」展は20日までなのだが、時間と体力と金額の点で本日は断念せざるを得なかった。次の三連休にでも行けるだろうか。

 今年の夏はこの4つの展覧会が頭の中をぐるぐる回り続けるような気がする。

 本日の努力目標は、本日中に「暁斎展」の感想のアップということにしておこう。