ビックモーターの不正事件を当初は、修理部門で車を破壊するという保険金詐欺を組織ぐるみで行っていた事件とばかり聞いていた。それ自体も衝撃的な事件であったが、店舗の前の街路樹の伐採や植樹桝の低木、下草などを除草剤で枯らしてしまうという暴挙が全国で行われていたと聞いて唖然とした。同時に自分が道路管理者の末端で街路樹の管理なども行ってきた者として、衝撃を受けた。
展示車や看板を見せるためと報道されているが、企業の社会的責任、公共性・倫理のかけらもない利益だけの追及の醜い姿の象徴のように思えた。
多くの場合、幹線街路に植樹桝・街路樹があるので、地元の方は少ない緑地帯として歓迎してくれる場合が多かった。管理の楽な低木のツツジと路線ごとに特徴的な高木をまとめて植えて、地域のシンボルにしたりすることには多くの協力が得られた。
しかし低木の下はゴミが捨てられたり、猫や犬の糞の匂いがして迷惑がらることも多いのも事実であり、地元の方からの苦情も多かった。また落葉樹を植えると秋の落葉の処理に悲鳴が上がることも多い。虫がつく低木は基本的に避けるが、それでも毛虫などの被害も耳にしてきた。車の出入り口のために必要最小限の移設や撤去は基準に沿って認められるが、手続きを踏まず一ヵ所か二か所をゲリラ的に壊される場合もあった。
だが、店舗が見易いように、あるいは看板が見にくいからという理由で敷地の前面を連続して高木を切り倒し、除草剤を撒いてしまうなどという暴挙は40年近い経験の中では皆無であった。それも大規模な企業が組織的に全国規模で行われていたとは驚きである。
多くの地先の商店や企業は、低木の隙間に草花などを植え、水やりや清掃、落葉処理に協力してくれた。そのような活動が企業が地域に根付かせるものである、とも企業の責任者や地元商店街から教わった。
ただし労働組合の役員でもある私としては、そこの企業で水やりや清掃活動に参加されているかたが就業時間前に無休で働かされているのか、聞きたかったが、行政マンとして応対している手前聞くことができなかった。本当は「労働組合との協議は済んでいますか」等と参加職員に聞きたいときもあった。しかしそこはぐっとこらえて、店長や責任者に「従事者が交通事故等に会ったり熱中症などにならないよう、明るく楽しく参加できるよう十分な配慮をお願いします」とだけは念を押していた。
こんな感想を持つと同時に、一方で被害が出ている自治体の道路管理者の、目が行き届いていない実態にももどかしさを感じている。