先日から「九相図」と並行して読んでいるのが「弥勒」(宮田登、講談社学術文庫)。1980年刊行のものを文庫化したもの。
「はじめに」で、著者は「弥勒といえば、誰しも広隆寺や中宮寺の半跏思惟像の高雅な仏像を思い浮かべる。…ところが私自身の観点から言うと、弥勒といえば、近世山岳信仰の一つである富士講にみられた身禄行者のあり方であり、一方で鹿島踊りで歌われる弥勒唄の歌詞にこめられた弥勒の舟の存在であった。」
「弥勒信仰を、あくまで日本の伝統的な民俗としてとらえる。ミロクは民俗語彙の次元で採集される性格があるという考え方によった。…それは農耕要素を多分に含んだ日本型のミロクの存在を摘出したつもりである。…日本仏教史の展開の中で位置づけられる弥勒信仰を通して、民俗的ミロクの性格を考察したらどのような結果が得られるだろうか。」(はじめに)
また第一章の結びでは「「弥勒の世」が農耕的な豊穣世界を表しているということは大きな特徴」と結んでいる。本日は第二章に入ったところまで読み進めた。とても刺激を受ける書物である。