歌に歌われやすい職業というのがある。
社会的底辺、弱者の職業が多く、弁護士、医者などの社会的エリートが歌われることはまずない。
歌は、人間の魂の叫びだから、これは当然である。
まず多いのは酒場の女。
「新宿の女」、「銀座の女」など、演歌の定番である。
社会的底辺といえば、「ヨイトマケの唄」という、三輪明宏の名曲がある。
土方の母親を歌ったもので、ヨイトマケとは、建物の基礎を固めるため、錘を滑車で持ち上げ、落とす作業である。
さらに底辺といえば、夜の女を歌った「星の流れに」という歌がある。
戦後の混乱期の、売春婦の歌である。
男の職業で多いのは、船乗り、漁師である。
「ひばりのマドロスさん」、「兄弟船」など・・・(古い歌ばかりですみません)
男らしい、ロマンのある職業ということだろう。
もっとも、漁師さんに言わせると、
「安く買い叩かれ、後継者もなく、今の漁業にロマンなんてないよ」
と言うかも知れない。
漁業が出たところで、林業。
これは「与作」で決まりである。
農業はどうか。
「刈干切唄」など労働歌としての民謡には多いが、歌謡曲、演歌ではあまり思い浮かばない。
「麦畑」という歌があり、農村を舞台にしたものではあるが、農業そのものを歌ったものではない。
堅い職業もある。
学校の先生は、「せんせい」、「学校の先生」など・・・
警察官は、「若いおまわりさん」。(ますます古くなってすみません)
今はない職業もある。
渡し舟の船頭さんは、「船頭さん」。
♪村の渡しの船頭さんは 今年六十のおじいさん・・・
いまどきこんな歌詞を書いたら、六十歳の人から抗議が来るだろう。
ジュリーも還暦ですからね。
バスガールは、「東京のバスガール」。
もちろん、バスガールとは観光バスのガイドさんではなく、定期バスの車掌さん。
昔は、路線バスに乗っていましたね。
私の職業はどうか。
どちらかというと、底辺で社会を支える仕事なのだが、私の職業の歌は・・・
皆無である。