私は毎年花粉症の辛さに苦しめられている。
何も対処しなければ目が痒く、
終日、鼻はつまったまま、
又は鼻をかみっぱなしの状態だ。
鼻炎薬を服用すれば、眠くてだるくなってしまう。
本を集中して読みたくても読めない。
どちらにしても憂鬱な季節である。
さらに加えて毎日の余震の連続で気分の乗らない日々が続いている。
そのような毎日であるが
自宅から駅まで続く桜並木の桜は満開であり、
春の日差しが心地よい季節にもなってきている。
そんな春になると何故か私が連想する食べ物はフキだ。
私にとってはフキ=祖母の想いでである。
春になると祖母は、
家の近所の山(ヤンバラ)に登り自生しているフキを山ほど採ってきていた。
祖母は、大量のフキとともに何匹かの蛇(ヤマカガシ)も捕まえてもきていた。
捕らえた蛇は、上手に祖母がその皮を剥がして
数日間天日干ししてその一部を財布に入れていた。
山から採ってきたフキの皮むきは、祖母と私の仕事だった。
フキは今では一年中スーパーで手に入れることができるが、
春先に山から採ってきたばかりのフキは子供の私にもご馳走であった。
そんなフキは何本も剥いていると手が真っ黒になってしまった。
蛇も捕まえてくる豪快な祖母は、煙草が大好きでもあった。
総入れ歯の祖母は、なぜだか煙草を吸うときには入れ歯を外していた。
そのくしゃくしゃの顔は、
アメリカのアニメーションに出てくるポパイに良く似ていた。
家には火鉢があって、祖母はその火鉢の横に座ることも多かった。
暖房用具としての火鉢と言うよりも、
大きな灰皿感覚でそこに煙草の灰を捨てていた。
現代のようにニコチン量を気にするような時代ではなかった。
祖母が吸っていたのはフィルターがついている煙草ではなく、
銘柄は分からないが金属製の長いキセルにタバコの葉を詰めて使用していた。
今思えば何とも風情の有る粋な姿であったかとも思う。
今夜はフキでも料理してみようと思う。
祖母が眠る宝久寺の墓のすぐそばには、数年前に亡くなったチビまる子ちゃんで有名な友蔵さんの墓もあるのである。