先日、愛犬を連れて散歩していると高齢の男性に助けを求められました。
老人は右手に杖を持ち、左手は駐輪場の壁伝いに歩いてきたようでした。
その老人は4メートル程の幅の道路を横切る手助けをして下さいと私に懇願してきたのです。
老人に近づいて確認すると、緩やかな下りの道なので渡れないとのこと。
その道を少し登った角を曲がりたいとの依頼でした。
困った時はお互い様です。
私は左手に犬のリードを持ち、右手で老人の左手をしっかり握り、そしてサポートをしながら老人の望む方向に進んだのです。
うちの愛犬は、道路の四隅で匂いを嗅ぎたかったようでした。
しかし、この時は散歩どころではありません。
愛犬を引きずりながら、老人のペースに合わせながら進みました。
老人から聞くところによると、
スーパーで買い物をし過ぎたので、リュックサックが重くて上手く歩けないとのこと。
杖をついての歩みですから本当に大変そうでした。
私はゆっくり、大切なものを運ぶように老人と歩調を合わせて歩きました。
聞くところによるとその老人は91歳。
生まれも育ちも、同じ武蔵小山。
同居されている奥さんは10年前に病に倒れて寝たきりだそうです。
現在は、同居の娘さんが四六時中面倒を見ているそうです。
その老人によると、娘さんとは食の趣味が合わないとのこと。
そんな理由で自炊されているそうです。
それにしても、こんな足の弱っているヨボヨボの老人が自炊しているの?との疑問も湧きました。
でも、語りはまともでした。
あと10メートル先を左に曲がった家との指示も歩いている途中にありました。
車が来ると避けるのも大変。
前は進むのですが、横への移動が大変でした。
するとすぐ先でこちらを凝視している女性が走りながら向かってきました。
その60歳位の女性は、老人の娘さんのようでした。
私に感謝の言葉を述べるより先に、その高齢の老人に向かって如何に心配していたかを興奮気味に語っていました。
その娘さんは私のことを何者かと疑っているようにも思えました。
私に感謝の言葉などは必要ありません。
すぐに、私はその女性とバトンタッチ。
一礼して、反対方向に愛犬と走りました。
久々に繋いだ高齢者の手は平温以上の温かさ。
久しぶりに、父親と握手したような感覚も思い出した私です。
誰にも迷惑をかけないで、そして誰にも頼らないで生活できるだろうかを自問自答した私でした。