渡辺潤監修『コミュニケーション・スタディーズ』では「病と死」の章を書かせていただいた私にとっては、「病」、「老い」、「死」などは特に興味ある分野でもあります。
今回読んだ本はジュリエット・カズの『葬儀!』。
今回も本を読んで印象に残ったことを書き留めておきたいと思います。
なぜ、喪服が黒かに疑問をもったことのなかった私。
その理由が以下のように書かれていました。
・「古代文明の多くで好まれたのは、白やグレイ」
・「中世では染料が高額だったため、黒い布地を手にするのは難しいことでした」
・「黒い服を着用できるのは、上流階級の人々だけ」
高額な黒い服を着用できるのは、裕福な上流階級の人々だけだったことがわかります。
・「19世紀の大英帝国(ヴィクトリア朝)の時代には、特に裕福な女性たちは白や淡いピンク色の服を脱ぎ棄て、上品で、手の込んだ仕立ての黒いクレープ織りのドレスを着るようになった」
・「フランスのあらゆる階級の人々にとって黒い喪服が常識となったのは比較的最近(19世紀)のこと」
上流階級から一般大衆への黒い喪服の普及、トリクルダウンの現象が黒い喪服でも見て取れるのは新鮮でした。
同時に小澤勲編『ケアってなんだろう』を読んでいます。
<こころを理解することで関係をつくろうとする志に限界が訪れる。だが、そもそも人は理解が届かなければ人と関係を結び、人を慈しむことができないわけではない。食べる、排泄する、衣服を替える、入浴する、そういった日常生活への援助を日々続ける。そこから「ただ、ともにある」という感覚が生まれる。ともに過ごしてきた時の重なりが理解を超える>
介護する相手が痴呆になって自分のことを認識してくれなくても、(それはこちらが望む反応がないだけであり、手をにぎるだけで何かが通じると強く納得する私でした。