以前「筒井康隆の作品と批評の姿勢」でも述べたように、筒井作品は大学時代にほとんど網羅した。筒井作品を読んだ友人が「ようやくお前の思考回路がわかった」と言ったこともあるくらいだから、かなりの影響を受けていたのは間違いないだろう。
ただ、その友人が言ったのはおそらく、というよりほぼ間違いなく筒井作品のドタバタやブラックジョークの側面のみについてであり、それゆえ一面的であると自分では思っている。前述 . . . 本文を読む
(はじめに)
まずは簡単に前回の補足をしておく。作品、特に物語と向き合う場合、一般に人はわかりやすさを求めるものだが、それゆえ作中の人物は統一的なものとされるため、その範囲を逸脱した行為や思考には何らかの説明が必要とされる。しかし現実において、人の精神というものはそのように統一的なものではありえない(過去ログ「自己の統一性という欺瞞」を参照)。私が前にドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」や夏目 . . . 本文を読む