■■三佐殿 2010年5月15日
先日捕獲した褐色症候群の急性発症患者Hに関して以下の通りご報告いたします。
これまでのところ、褐色に対して急激な反応を示す=褐色症候群だと単純に考えられてきましたが、「褐色」の定義が曖昧なままでした。しかし今回、Hの言動・行動の分析を通して、その内実がかなり明らかになったように思います。
例えば我々は、先天的褐色と後天的褐色の双方を彼に見せましたが、ほとんど同じような反応を示すことがわかりました。特に興味深いのは、「ダークシェル」及び「春恋乙女」において、前者は延焼、後者は夕焼けによる全く一時的な褐色状態に対しても、かなりの興奮を示したことです。このことは、日に焼けた状態であれば興奮度が増すというこれまでの知見を補強する結果であると言えるでしょう。要するに、褐色症候群においては元から褐色である必要はなく、「ラテン系」、「ダークエルフ」といったものは単なる下位区分に過ぎない、ということです。この前提をもとにすれば、褐色症候群は色彩感覚の問題として取り扱うことが妥当であるように思われますが、その一方で、Hは東南アジア系に対してあまり反応を示さない、という極めて興味深いデータも得ています。我々が彼の症候群をL4と診断した理由の大半もここにありますが、このような反応が特殊なものか、それともある程度の普遍性を持つのかについては、これから対照実験を重ねる中で明らかになっていくことでしょう。
さて、褐色症候群の根本的な原因が色彩感覚にあると考えたとき、Hによる次の供述は非常に大きな意味を持ちます(彼の言う画像を入手したので添付いたします)。
池袋にあるとらのあなという店を出るとき、ふとガチャポンを見たんですよ。いえ、理由はわかりません。そしたら、日焼け跡のあるハルヒに目が一瞬目が釘付けになりましてね、水着の間に手を入れて思いっきり揉んでやりたい衝動にかられたんですよ。ええ、一瞬のことなのにあまりに具体的な欲望だったんでよ~く覚えていますよ。え?買うわけないじゃないですか。そんなものを仕掛けるなんて俺を陥れるための陰謀に決まっているわけだし。

彼が褐色に対して視覚的に興奮することはあっても、上記のように具体的な反応を示さなかった(より正確に言えば言語化してこなかった)ことは事実です。ここには、スリットやニーソックス(「絶対領域」という言葉もあります)を讃えるがごとき境界線への執着、あるいは見えないものによる呪縛が関係しているように思われますが、当然のように日焼けは衣服ではありません。
要するに、それが境界線を構成する作用について慎重に研究を重ねる必要があるわけですが、すると次のようなHの発言は関連事項として特筆すべきでしょう。
1.「油断大敵」という漫画において
褐色の男性教師が色白の女子生徒を薬で眠らせ、さらに媚薬も使いつつ性交する話を見て、予想外に興奮した。
2.大学入試終了直後に見たエロチャンネル
黒人の男が白人か黄色人種かとセックスしているのを見て興奮した。
我々はここから次の可能性を考えました。すなわち、褐色症候群が男性にも作用する可能性、さらに2の事例に関しては、金髪に反応した可能性です。しかしこの見立ては、質問を重ねるうちにどうも違うらしいことがわかってきました。わかりやすい2の事例で説明しますが、そもそもHは黒人の女性への反応に乏しく、さらにマンフォビアの傾向もあるため、黒人の男に反応した可能性は極めて低いと言わざるをえません。また相手の女性についても、「黒人や褐色ではなかった事は覚えている」程度で髪の色などは記憶していない様子のため、金髪に反応したという推論もあたらないように思われます。
そこで我々は、この反応が褐色(黒)と白のコントラストに由来するのではないか、と考えました(日焼け跡=境界線=コントラスト)。つまりは褐色(黒色)の身体が白色の身体と交わっていることに反応する、もっと踏み込んで言うなら、褐色(黒)のペニスが白い身体に出入りしている様に興奮するという可能性を推論するに至ったのです。今のところ、この推論を検討するための対照実験を行っておりますが、バイブや触手といったものには反応が薄いようです。これに関しては青―白、間―人間などへと幅を広げつつ、確認を行っていく所存です。
とはいえ、急速に様々な刺激を与えれば思わぬところで末期症状を発症する可能性もあります。それを避けるため現在は慎重に実験・観察を繰り返している状況ですので、その旨をご承知おきください。また、L4の症状なのか、あるいは単純に精神に変調をきたためかは不明ですが、言動において造語やパラノイア的傾向が散見されます。この間は「喉が痒い」というのをしきりに「粥い」と訂正するので何かと思えば、掻き毟ってグジャグジャな状態を表すのに適切だからだそうです(お食事中でしたら申し訳ありません)。さらには「死」考、「痴」考などの造語も行っています。Hは自分を心理学的に分析する傾向が見られるため、時折非常に理性的な印象を受けますが、心理学的に自らを語る精神病者など今日ではありふれており、彼もまたそのうちの一人だと言えるでしょう。
しかし、「冷静なる狂人」はなかなかに興味深い素材でもあります。このL4患者が必ずや研究の飛躍の足がかりとなるでしょう。ご期待ください。
褐色症候群研究所所長 ●● ●●
追記
Hの発言に関する資料として以下のものを同封いたしますのでご確認ください。
「六軒島の中心で褐色萌えを叫ぶ」「帰納、演繹、バイアス~続 可変的な好み~」「褐色狂の詩」「年上好きなどと併せて考える金髪好きの源泉」「同性愛への嫌悪?~マン・ヘイティング~」「感覚と理論~二元論的作品理解の危険性~」。
先日捕獲した褐色症候群の急性発症患者Hに関して以下の通りご報告いたします。
これまでのところ、褐色に対して急激な反応を示す=褐色症候群だと単純に考えられてきましたが、「褐色」の定義が曖昧なままでした。しかし今回、Hの言動・行動の分析を通して、その内実がかなり明らかになったように思います。
例えば我々は、先天的褐色と後天的褐色の双方を彼に見せましたが、ほとんど同じような反応を示すことがわかりました。特に興味深いのは、「ダークシェル」及び「春恋乙女」において、前者は延焼、後者は夕焼けによる全く一時的な褐色状態に対しても、かなりの興奮を示したことです。このことは、日に焼けた状態であれば興奮度が増すというこれまでの知見を補強する結果であると言えるでしょう。要するに、褐色症候群においては元から褐色である必要はなく、「ラテン系」、「ダークエルフ」といったものは単なる下位区分に過ぎない、ということです。この前提をもとにすれば、褐色症候群は色彩感覚の問題として取り扱うことが妥当であるように思われますが、その一方で、Hは東南アジア系に対してあまり反応を示さない、という極めて興味深いデータも得ています。我々が彼の症候群をL4と診断した理由の大半もここにありますが、このような反応が特殊なものか、それともある程度の普遍性を持つのかについては、これから対照実験を重ねる中で明らかになっていくことでしょう。
さて、褐色症候群の根本的な原因が色彩感覚にあると考えたとき、Hによる次の供述は非常に大きな意味を持ちます(彼の言う画像を入手したので添付いたします)。
池袋にあるとらのあなという店を出るとき、ふとガチャポンを見たんですよ。いえ、理由はわかりません。そしたら、日焼け跡のあるハルヒに目が一瞬目が釘付けになりましてね、水着の間に手を入れて思いっきり揉んでやりたい衝動にかられたんですよ。ええ、一瞬のことなのにあまりに具体的な欲望だったんでよ~く覚えていますよ。え?買うわけないじゃないですか。そんなものを仕掛けるなんて俺を陥れるための陰謀に決まっているわけだし。

彼が褐色に対して視覚的に興奮することはあっても、上記のように具体的な反応を示さなかった(より正確に言えば言語化してこなかった)ことは事実です。ここには、スリットやニーソックス(「絶対領域」という言葉もあります)を讃えるがごとき境界線への執着、あるいは見えないものによる呪縛が関係しているように思われますが、当然のように日焼けは衣服ではありません。
要するに、それが境界線を構成する作用について慎重に研究を重ねる必要があるわけですが、すると次のようなHの発言は関連事項として特筆すべきでしょう。
1.「油断大敵」という漫画において
褐色の男性教師が色白の女子生徒を薬で眠らせ、さらに媚薬も使いつつ性交する話を見て、予想外に興奮した。
2.大学入試終了直後に見たエロチャンネル
黒人の男が白人か黄色人種かとセックスしているのを見て興奮した。
我々はここから次の可能性を考えました。すなわち、褐色症候群が男性にも作用する可能性、さらに2の事例に関しては、金髪に反応した可能性です。しかしこの見立ては、質問を重ねるうちにどうも違うらしいことがわかってきました。わかりやすい2の事例で説明しますが、そもそもHは黒人の女性への反応に乏しく、さらにマンフォビアの傾向もあるため、黒人の男に反応した可能性は極めて低いと言わざるをえません。また相手の女性についても、「黒人や褐色ではなかった事は覚えている」程度で髪の色などは記憶していない様子のため、金髪に反応したという推論もあたらないように思われます。
そこで我々は、この反応が褐色(黒)と白のコントラストに由来するのではないか、と考えました(日焼け跡=境界線=コントラスト)。つまりは褐色(黒色)の身体が白色の身体と交わっていることに反応する、もっと踏み込んで言うなら、褐色(黒)のペニスが白い身体に出入りしている様に興奮するという可能性を推論するに至ったのです。今のところ、この推論を検討するための対照実験を行っておりますが、バイブや触手といったものには反応が薄いようです。これに関しては青―白、間―人間などへと幅を広げつつ、確認を行っていく所存です。
とはいえ、急速に様々な刺激を与えれば思わぬところで末期症状を発症する可能性もあります。それを避けるため現在は慎重に実験・観察を繰り返している状況ですので、その旨をご承知おきください。また、L4の症状なのか、あるいは単純に精神に変調をきたためかは不明ですが、言動において造語やパラノイア的傾向が散見されます。この間は「喉が痒い」というのをしきりに「粥い」と訂正するので何かと思えば、掻き毟ってグジャグジャな状態を表すのに適切だからだそうです(お食事中でしたら申し訳ありません)。さらには「死」考、「痴」考などの造語も行っています。Hは自分を心理学的に分析する傾向が見られるため、時折非常に理性的な印象を受けますが、心理学的に自らを語る精神病者など今日ではありふれており、彼もまたそのうちの一人だと言えるでしょう。
しかし、「冷静なる狂人」はなかなかに興味深い素材でもあります。このL4患者が必ずや研究の飛躍の足がかりとなるでしょう。ご期待ください。
褐色症候群研究所所長 ●● ●●
追記
Hの発言に関する資料として以下のものを同封いたしますのでご確認ください。
「六軒島の中心で褐色萌えを叫ぶ」「帰納、演繹、バイアス~続 可変的な好み~」「褐色狂の詩」「年上好きなどと併せて考える金髪好きの源泉」「同性愛への嫌悪?~マン・ヘイティング~」「感覚と理論~二元論的作品理解の危険性~」。
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