以前、トウガン(ウリ科)を種から育てたところ100個以上もできて処理に困ったことがある。そのため、最近は苗を1本買ってきて育てることになった。同時に、どこからか勝手に芽を出してくるトウガンも期待してもいる。まずはその1本の苗から実ができ始めた。実の表面には産毛が生えていて触ると痛い。その産毛がなくなってくると熟成の証拠となる。また、「ブルーム」といって、白い粉が実の表面を覆っているのも熟成のしるしだ。両方あったのでとりあえず、2個を収穫しようとしたが、ブルームのあるほうはまだ産毛が強かったので後日にする。
収穫したトウガンの長さを測ったら36cmだった。耳の病気と貧困にあえいだ「境涯の俳人・村上鬼城」の俳句「冬瓜のころげて荒るる畠かな」が胸にしみてくる。冬瓜は夏の旬の野菜だが、季語は秋。鬼城の句は夏野菜が終わるころの畑にただよう冬瓜のはかなさと逞しさとが共存する風景が、作者の葛藤と静謐な心が伝わってくる。わが畑の冬瓜は、宝探しと言おうか、意外性の発見と言おうか、こちらの予想を裏切った藪に歓喜の宝となっている。