友人が「読んでみて」と貸してくれた小冊子・正木髙志『生命平和憲法』(ふくしま文庫、2018.5)を取り急ぎ読む。インドを旅して仏教的な世界観を獲得しているが一神教でないのが安心できる。風貌も尊顔もネイティブインディアンのような神々しい修行者のようだ。42頁の短い冊子ではあるが、その意味では哲学的な世界観がこってり凝縮されている。
表題からして、新しい憲法案が書いてあるのかと思っていたら、物語風の仏教説話もどきになっていて、いつの間にかこの現代で人間いかに生きるべきかを説いている。その構成や例え話は成功しているとは思えないが中身は十分納得できるものだった。その基本は、9条を中心とする現行憲法を遵守・貫徹していくことがいのちと平和を堅持していくことにつながると主張している。
とりわけハッとしたのは、人間以外のあらゆる生きものは就職しないで生きていること、大昔の人々も就職しないで生きてきた、就職しないと生きていけないという迷信は最近作られたものだ、仲間たちとぜいたくしないで自給自足の生活をやればそこに自由がある、と明示しているところが感銘できる。
さらに、資源や環境に限界があり現代文明は人類の危機の「緊急事態」だとローマクラブは1972年に警告した。こうした事態は文明の「羽化」のチャンス=歴史のターニングポイントであると作者は言う。地を這う毛虫の文明から空を飛ぶ「蝶文明」への変態を提起している。
大まかな論理・思想の展開は粗く飛躍しているが、それを自然農として自給自足的な農園を経営している正木さんの「グローカル」な生き方には共鳴できるものがある。その道はきわめて遠く、時間がかかる過程でもある。自然の胎内のなかでゆったり生きていくのが21世紀の希望であるのは相違ないが、誰でも実践できるものではない。
しかしこのところ、若い夫婦がその清貧の暮しを甘んじて豊かに生きようとするじれが増えてきているのも確かだ。髪の毛が邪魔だったオイラはそれをやりきる意志も考えもなかったが、リタイヤしてやっとその入り口にたどり着いたところだ。
梅雨空を見ながらきょう、梅シロップ漬け用に約1.8kg、梅干し用に650gの梅をやっと漬け込んだ。