知人の展覧会が市内で催されていて、今日はその最終日ということもあって見に行こうという目的があったので、朝の出発時には小雨が降っているも日光へ行ってみることにする。北へ進むにしたがって雨はやみ、何とか今日のもう一つの目的が達成されそうだと、先ずは花石神社に建立されている「焼加羅(たきがら)」碑の拓本採取に向かう。着いてみると、今日は集会所で地元の人々の集会があるとのことだが、拓本許可を話すと快く了解していただける。この辺が、どこかの市町とは大いに異なる住民皆様の心の広さだとつくづく感謝する。しかし、碑面は汚れでドロドロ。集まったご婦人が、集会所にある水道を使って洗えば!と、これまた嬉しい話。全てを甘えて綺麗に磨いてから手拓開始。と言っても、小さな石碑なので手拓は簡単と思いきや、碑面を洗ったのと朝方までの雨で碑面は水分タップリ。画仙紙を水張したものの、まったっく乾かない。仕方がない!と、切れ端の話画仙紙を吸い取り紙よろしく利用してから墨入れした。それが、ここへ掲載した拓本画像である。碑面の水洗い時間を含めて1時間半ばかりで終了。そこで考え、今日は新しい拓本用墨の試し採りを行うことにして再び同じへ碑面に水張。そしていざ墨入れという段階で、墨が少しばかり、いや、ずいぶんと硬い。自分では、墨を柔らかくして持ってきたつもりだが、まだまだ希釈液が足りなかったようである。仕方なくその硬い墨を用いて試してみたが、まあまあ濃さは納得するものの、粘り気が強すぎて慎重にならざるを得ず、思わぬ時間を費やしてしまった。そんなこんなで、今日は同じ石碑の拓本を2枚採ってしまった。日光市で必要とあれば差し上げることにしよう。
次は、近くの八幡宮神社へ行って休憩を兼ねて少し早いが昼食とする。この昼食が行けなかった。休んでいる間に、いつしか小雨が降りだして来た。予定では、境内にある庚申塔の中の1基を嘗て春日部市に住んでおられた故中山さんと採って以来初めて。今日は、改めて採択することにしていたので、慌てて拓本道具一式を抱えて早速作業開始。元々、その庚申塔はひどく荒れた状態なので、手拓するに最高の条件でも文字を読めるよう拓本を採るには難儀な作業。それが雨の中では、どう見てもまともな拓本にはならず。それでも、今夜の難問解読に何度目かの挑戦資料として持ち帰ることにする。
さて、知人の展覧会会場へ行ってみると、準備中で鍵がかかっていて入れない。その辺へ用事で出かけたのだろうと、待つのが大嫌いな私としては珍しく40分近くを現地で待ったが、一向に誰も帰って?来ない。ついに堪忍袋が破裂して、ドアを蹴飛ばさずに體悪言葉を聞くものもいない中で「せっかく日光まで来たのに」と呟きながら、雨の中を帰路につく。
話を最初に戻すと、「焼加羅」碑のある境内には、その銘文の読み下しもあるので読んでみると、少なからぬ箇所で私とは意味の取り方が違っている。まあ、こんな石碑の読みの違いなど、ここへ来る観光客を含めて誰も関心を持たないだろうが、次回は私なりの読みと銘文を掲載したいと思っている。何しろ延宝三年という古さなので、その文字形を含めて非常に面白い上に、短文ときているのでこうした物に興味がある人にとっては楽しい読み物となるでしょうから、お暇な折に挑戦してみてください。なお、拓本画像の行が微妙に傾いている箇所等は、私のせいではなく現物がそうなっています。