一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

人生の一日(8) ……私が「佐賀に住んで良かった」と思ういくつかの理由……

2025年03月04日 | 人生の一日


今から36年前の1989年当時、私は福岡県(西新)の賃貸マンションに住んでいた。
あと2年ほどすれば長女が小学校に入学するというタイミングで、
私は家の購入を考えていた。
私が当時勤めていた会社は転勤が多く、
できれば子供たちには転校の悲哀を味わわせたくないと考えていたからだ。
私に「ふるさと」(佐世保)があるように、
子供たちにも「ふるさと」と呼べる場所を作ってやりたかった。
ならば、定住の地を探し、住む拠点となるマイホームを持とうと思った。
転勤になれば、私だけが単身赴任すればいい……と考えていた。

当時は、(1980年代後半から1990年代初頭にかけての)バブル景気の真っ最中で、
日本全体が浮かれていた頃だった。
「家賃を払うのはバカらしい。家を買ってローンを払った方がマシ」
といった風潮もあり、
今よりも「家を買う」というハードルは随分と低かったように思う。
私は、書店で、
田中寅彦著『今すぐマイホームを獲得する本: 不動産トレンドの先の先を読む 苦しいのは、はじめの5年間だけだ』(かんき出版/1989年3月刊)という本を買った。
田中寅彦は将棋棋士だが、当時は不動産投資に熱心であった。(笑)
今読むと、とんでもないことが書かれていたりするが、
当時はこの本が役に立った。
帯に「せっかちにマイホームを持ちたい人の必読書!」とあったが、
この本に背中を押される形で、私はマイホームを持った。


マイホームの場所は、
福岡(当時住んでいた場所)、佐世保(私の故郷)、佐賀(配偶者の故郷)の三択であったが、
私が単身赴任するとなれば、配偶者と子供たちだけで暮らさなければならず、
配偶者の親兄弟、親戚の多い佐賀県の方が、何かと心強いのではないかと考え、
佐賀県の中でも少し田舎の町(配偶者の生誕地)に決めたのだった。
「マンション」か、「一戸建て」か、と迷ったとき、
「マンション」の方が、
①管理費や修繕積立金がかかる
②リフォームやリノベーションが自由にできない
③共同住宅なので近隣とトラブルが発生しやすい
④管理規約に縛られる
⑤駐車場代を別に支払うことになる
⑥高層階は災害で生活に支障が出やすい
⑦住民が減少すると管理が不十分になる
など、年月が経てば経つほどデメリットが大きくなるような気がして、
「一戸建て」に決めた。
佐賀の田舎なので、土地代も安く、
ボーナス払い無しの月々均等払いでローン(25年払い)を組むことができた。


1989年の12月に家を建てたあとは、しばらくは福岡で単身赴任をしていたのだが、
せっかく家を建てたのに、私が家に住めないのは「おかしい」と考え、(笑)
会社を辞め、(このタイミングで徒歩日本縦断を決行)
佐賀のマイホームに近い(転勤のない)会社に就職し、
60歳で25年ローンを無事払い終え、現在に至っている。


このように佐賀に住むことになったのは、
「私が単身赴任するとなれば、配偶者と子供たちだけで暮らさなければならず、配偶者の親兄弟、親戚の多い佐賀県の方が、何かと心強いのではないかと考えたから」なのであるが、
家を建てて35年が過ぎたが、今では、この佐賀に住んで本当に良かったと思っている。

【理由】

➀子供たちに「ふるさと」らしい「ふるさと」を作ってやることができた。
子供たちも佐賀が大好きで、結婚しても佐賀に住んでいるので、
私も子供たちや孫たちにいつでも会うことができる。




➁自然に恵まれている。
玄界灘と有明海に挟まれており、海産物も豊富。
佐賀平野、白石平野など平野部も多く、農産物も豊富。
背振山系、多良山系、黒髪山系などの山々に囲まれており、山の恵みも豊富。
私にとっては(意識して建てたのではないが)マイホームが「花の名峰・天山」の麓にあり、
天山がホームマウンテンになっているのが、なによりも大幸運であった。


③静か
寝る時間に、外でほとんど物音がしない。
安眠できる。老人にとってこれほどのプレゼントはない。


④情報や文化が淘汰されてやってくる。
若い頃は、(大都会でしか上映、上演されない)インディペンデンス映画、舞台、コンサートなどに対し、羨ましく思ったりもしたが、今は、ネットで大抵のものは手に入るし、情報も得ることができるし、映像も見ることができる。老いた今は(読書中心の生活になったので)適度に淘汰されてやってくる情報、文化がかえって心地好くなっている。


⑤温泉がたくさんある
嬉野温泉、武雄温泉、古湯温泉などの有名な温泉ばかりでなく、
佐賀県の市町村のほとんどに温泉があり、我が家の近くにも多くの温泉がある。
どの山に麓にも温泉があるので、下山後の温泉には困らない。


⑥食べ物が美味しい
「佐賀牛」「呼子のイカ」「竹崎カニ、カキ」「からつバーガー」などの他にも、
知られざる美味しい食べ物がたくさんある。でも教えない。(笑)


⑦イベント、祭りなどが多い。
「佐賀インターナショナルバルーンフェスタ」「唐津くんち」「有田陶器市」「鹿島ガタリンピック」「古湯映画祭」などの他にも、多くの催し物があるが、教えない。(コラコラ)




昨年(2024年)行われた全国魅力度ランキングで最下位の佐賀県だが、
私としては、
〈どうか(お願いだから)佐賀県の魅力に気づかないでほしい〉
と思っているので、
佐賀県も(変に)魅力度ランキングをアップさせようとは思わないで欲しいし、
努力しないで欲しい。
インバウンド観光の影響で、日本全国津々浦々、どんな田舎にも外国人が殺到する昨今、
自然に恵まれ、静かで、人も少なく、温泉が多く、食べ物が美味しく、祭りが楽しい、
そんな佐賀県は貴重な存在だと思うのだ。
なので、佐賀県の魅力に気づいた芸能人や文化人は、
誰にも知られないように、密かに、お忍びで、佐賀県にやってきている。
そんな佐賀県に住む私は、本当にラッキーだと思う。
このブログも、
「知られざる観光地」「穴場」探しの人々にどうか見つかりませんように……

この記事についてブログを書く
« 一人読書会『魔の山』(トー... | トップ | 初めてお越し下さった方へ »