※はじめに
「映画をみる」と書くとき、
私は「観る」ではなく、「見る」と表記している。
(根拠はコチラを参照)
「TVをみる」の場合は「観る」と表記しているので、
今回の文章には「見る」と「観る」が混在している。
表記間違い、変換間違いなどではなく、
あえて書き分けているので、ご承知おきを……
連続ドラマ『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』は、
2008年7月期にフジテレビ系列で1st Seasonが放送され、
平均視聴率、最高視聴率ともに、
同クール連続ドラマ内第1位を記録する大ヒットとなった。
リアルな医療・災害現場や、
患者とそれに接する人々が織りなす人間ドラマ、
主人公たち5人の絆と成長物語が、
それまでの医療ドラマとは一線を画する作品として多くのファンを生み、
2009年の、スペシャルドラマ、
2010年の、2nd Seasonと次々に続編が制作され、
いずれも大好評を博した。
昨夏(2017年夏)、7年ぶりの連続ドラマ最新作となった3rd Seasonも、
平均視聴率14.6%、
最高視聴率16.4%と、
共に同クール連続ドラマ内で第1位となり、
その変わらぬ人気ぶりを示した。
そして、誕生から10年となる今年(2018年)、
映画『劇場版コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命』が誕生した。
10年前、
連続ドラマ『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』の1st Seasonが放送されたとき、
出演者があまりに若かったので、正直、
〈ありえない〉
と思った。
山下智久は、1985年4月9日生まれなので、10年前は23歳。
新垣結衣は、1988年6月11日生まれなので、10年前は20歳。
戸田恵梨香は、1988年8月17日生まれなので、10年前は19歳。
(いずれも2008年7月当時の年齢)
当初は、フライトドクター候補生で、
フェロー(後期臨床研修医)として専門研修を受けるという設定であったが、
フェローと言えども、
「医師免許を有し、採用時において卒後2年間の臨床研修を終了した者で、かつ医師免許取得後3~5年の者」などという応募条件がつくのが普通で、
20歳前後のフェローはありえない。
その、あまりにもリアリティの無さに、
正直、観る気はしなかった。
だが、私の配偶者は、『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』のファンで、
1st Season、
2nd Season、
3rd Season、
それにスペシャルドラマもしっかり観ており、
私もつられて、なんとなく一緒に観ていた。
違和感を抱いていたキャストも、
3rd Seasonの頃には皆30歳前後になり、
役に相応しい年齢になったことで、
リアリティも感じられるようになった。
だから、最初はあまり心を動かされなかったが、
次第に面白くなり、
3rd Seasonは大いに楽しんで観ることができた。
とは言っても、
映画化された『劇場版コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命』は見に行くかどうかは、
正直、迷った。
そこまでの思い入れはなかったからだ。
だが、夏休みで、お子様向けの映画ばかり。
で、
〈『劇場版コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命』でも見てみようか……〉
と思った次第。
地下鉄トンネル崩落事故から3か月後。
旅立ちの時が迫る藍沢耕作(山下智久)、
緋山美帆子(戸田恵梨香)たちは、
10年間を共にした互いへの思いを抱えたまま、日々を過ごしていた。
そんなある日、
成田空港への航空機緊急着陸事故と、
東京湾・海ほたるへの巨大フェリー衝突事故が連続して発生。
翔陽大学附属北部病院救命救急センターに出動要請が入り、
藍沢と約10年間苦楽を共にしてきた白石(新垣結衣)らは、
これまでにない事態に立ち向かうことになる……
映画が始まると、
まず、ドラマ版を振り返る映像が流れる。
某映画評論家が、レビューに、
「だからTVドラマを観ていなくても大丈夫」
と書いていたが、これは間違い。
ドラマ版を振り返る映像は短く、断片的で、
この程度の映像ではTVドラマの内容や人間関係を把握することは無理である。
では、なぜドラマ版を振り返る映像が流れるかと言えば、
たぶん、これまでTVドラマを観てきた人たちのためである。
TVドラマを観てきた人たちであれば、
この程度の映像でも、思い出すことができる。
感慨を呼び起こすことができる。
『劇場版コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命』を見る前の、
準備体操のようなものであったろう。
本編が始まり、
物語が進んで行くに従って、
私の目には、涙があふれ、
最後まで涙が乾くことはなかった。
私が年を取って涙腺がゆるんでいることもあろうが、
TVドラマのときもよく涙を流していたので、
TVドラマを観ているときと同じような感じであったと思う。
面白かったし、
感動もしたが、
それだけだったような気もする。
「それ以上、何を求める?」
と言われそうだが、
ひとつの映画として見た場合、
あるいは、TVドラマと比較した場合、
「それは優れた作品であったのか?」
と問われると、口ごもってしまう私がいる。
映画には、TVドラマとは違う「それ以上」のものを求めてしまうのだ。
そうでなければ、映画にする意味がない。
スペシャル版で十分なのだ。
今回の『劇場版コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命』には、
スペシャル版を超えるものがあったか……というと、
正直、なかったような気がする。
私自身、映画を見ているというより、
TVドラマの延長、スペシャル版を鑑賞しているような気分であった。
これまで、TVシリーズでは、
「高速道路多重衝突事故」(1st Season)、
「列車脱線事故」(スペシャルドラマ)、
「旅客機不時着事故」(2nd Season)、
「地下鉄トンネル崩落事故」(3rd Season)
という大規模災害が描かれてきたが、
劇場版では、それらを上回る規模の災害ということで、
「成田空港と、東京湾・海ほたるを舞台にした未曽有の連続大事故」
と謳っていたが、これが実に「しょぼい」。(コラコラ)
成田空港の方は、飛行機の横に負傷者を並べているだけだし、
海ほたるの方も、黒煙を立ち昇らせているだけである。
緊迫したシーンは少なく、
多くは病院内でのやりとりで、
中だるみも見られる。
よって、ひとつの映画として見た場合は、
優れた作品とは言い難い。
TVドラマに「おんぶに抱っこ」であるし、
独立した作品とは言えないのである。
ただし、評価できるものもある。
それはテーマだ。
映画では、「家族」をテーマに物語を展開させていたが、
これが実に良かった。
「家族とは何か?」
「家族になるとはどうゆうことなのか?」
を、登場人物それぞれの過去や、今の事情を描き、
感動へと昇華させていた。
特に、
雪村双葉(馬場ふみか)と母・雪村沙代(かたせ梨乃)、
富澤未知(山谷花純)と岸田彰生(新田真剣佑)、
フェリーの車の中で負傷した父親と、その息子など、
家族と確執がある者、
これから家族になろうとする者、
家族と再会した者、
家族を失った者など、
様々な家族の形を描き、秀逸であった。
そして、
朝から晩まで苦楽を共にした5人組の関係は、
まさに家族であったし、
家族愛に満ちた作品であったと思う。
よって、
苦言は呈したものの、
見る価値はある……と思う。
これまでTVドラマの方は観たことがないという人には強くは薦めないが、
これまで断片的にでも観たことのある人なら、
私と同じようにきっと楽しめると思う。
映画館で、ぜひぜひ。