一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

映画『おっぱいバレー』 ……九州在住の40代・50代に超オススメの作品……

2009年04月26日 | 映画


「ちょっと出掛けてくる」と私。
「あら、どこへ?」と配偶者。
「映画を見に行ってくる」
「ふ~ん」
会話はここで終わるかと思いきや、二女が口をはさむ。
「お父さん、何を見るの?」
と、訊かなくてもいいことを訊いてくる。
配偶者も私を見ている。
「『おっぱいバレー』を見ようかと……」
「おっぱいバレー?」
と配偶者と二女が口を揃える。
「なんか熱血教師と生徒の物語で、すごく感動する映画みたいなんだ」
と、しなくてもいい言い訳をする。
「おっぱいバレーが?」
と配偶者。
そこへ長女が連れてきた孫がハイハイをしながら近づいてきた。
配偶者は、孫を抱き上げながら、
「おじいちゃんは、おっぱいを見に行くんですって~ おかちいでちゅね~」
とのたまう。
「おいおい、孫に変なこと言うなよ」
私は、配偶者に抗議しながら、身支度もそこそこに急いで家を出る。
車で約30分で映画館に着く。
現在、佐賀県内には、良質なミニシアター系の作品を上映しているシアター・シエマ以外は、すべてシネコンになってしまった。
昔は、「大人1枚」の一声で買えたチケットも、シネコンでは質疑応答が繰り返されるので面倒だ。
チケット売場に並び、順番を待つ。
待つ間、聞き耳を立てていたが、『おっぱいバレー』のチケットを買った人はいなかったようだ。
いよいよ私の番になり、窓口に進む。
若いお嬢さんの笑顔が私を迎えてくれる。
「『おっぱいバレー』」
ときっぱり一言で片づける。
お嬢さんは、笑顔で、
「はい『おっぱいバレー』ですね。『おっぱいバレー』は次の回の上映時間のものでよろしいですか?」
「はい、それでお願いします」
「『おっぱいバレー』は、チケットは1枚でよろしいでしょうか?」
「はい、1枚でお願いします」
「『おっぱいバレー』の席はこのようになっていますが、どこをご希望ですか?」
お嬢さんは、座席表を見せながら質問してくる。
「真ん中辺りでお願いします」
「エッチ……」
(なんだよ~、いきなりエッチって……)
「H列の9番でよろしいでしょうか?」
「あっ、はい、それでお願いします」
料金を払い、ロビーに戻る。
上映15分前になると、館内放送で入場案内がある。
「ただ今より『おっぱいバレー』の入場を開始します。『おっぱいバレー』のチケットをお持ちの方は、入口の方までお越し下さい」
ロビーにいる人たちから注目されているようで、なかなか動き出せない。
一呼吸おく為にトイレに行き、それからさりげなく入口に向かう。
チケットを受け取ったお嬢さんは笑顔で、
「『おっぱいバレー』はスクリーン4になります。左に曲がってスグです」
こうして、私はやっと、映画館の座席に座れたのである。

なぜ『おっぱいバレー』を見ようと思ったのか?
「おっぱい」という言葉につられて……いえいえ、違います、違います!

第一には、原作。
原作は、放送作家や脚本家として活躍する水野宗徳の『おっぱいバレー』(リンダパブリッシャーズ)。
実話を元にした青春小説で、ちょっとエッチなタイトルからは想像もつかないような感動のストーリーだということ。

第二に、制作プロダクションが【ROBOT】だということ。
映画『K-20 怪人二十面相・伝』のレビューの時にも述べたが、この【ROBOT】が制作する映画はとにかく面白い。
『踊る大捜査線 THE MOVIE 』
『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ! 』
『海猿 ウミザル』
『LIMIT OF LOVE 海猿』
『ALWAYS 三丁目の夕日』
『ALWAYS 続・三丁目の夕日』
など、ヒット作を連発している制作プロダクションなので、ハズレはないと思った。

第三に、主演が、綾瀬はるかだということ。
綾瀬はるかは昨年から今年にかけて、
『僕の彼女はサイボーグ』(2008年、ギャガ・コミュニケーションズ)
『ICHI』(2008年、ワーナー)
『ハッピーフライト』(2008年、東宝)
と主演作が相次ぎ、今、もっともノリにノッている女優なのだ。
その、今もっとも旬な女優の最新作を見逃す手はない。


で、映画は、どんなストーリーかというと……
舞台は、1979年の福岡県北九州。(原作本とは違っているが、この点が、我々九州人、我々中年にはたまらない魅力なのだ)
23歳の寺崎美香子は、戸畑第三中学校に赴任してきた臨時採用の新任教師。
彼女は中学生の時に1人の教師に出会ったことがきっかけで国語教師になった。
しかし、前の学校でのある事件で生徒の信頼を失い、教師という仕事に自信を失いかけていた。
美香子は新天地で再スタートを切るべく、意気込んで男子バレーボール部の顧問になったが、部室にいたのは女の子のことしか頭にない5人の生徒たち。
彼らはやる気もなければ、バレーボールすらまともに触ったことがない。
Hな妄想トークに花を咲かせ、馬鹿なことばかり繰り返す日々を送っていた。
周囲には「馬鹿部」と呼ばれ、まさに廃部寸前状態。


美香子は彼らを何とか奮起させるため、「あなたたちが頑張るなら、先生何でもするから!」と宣言する。
すると生徒たちは、
「じゃぁ、試合で1勝したら先生のおっぱいを見せてください!」
ととんでもないことを言い出す。
最初は断る美香子だったが、生徒たちの「何でもすると言ったじゃないか! 先生の嘘つき」という言葉に反応し、いやいやながらも承諾してしまう。
夢のような「おっぱいの約束」を前に、今までとは別人のように張り切ってバレーの練習に打ち込んでいく生徒たち。
その姿に、美香子もバレーの指導法を勉強し、彼らを猛特訓。
しかし、美香子は、複雑な気持ちの狭間で揺れ動いていた。
「おっぱいは見せたくない!」が、
「生徒たちに勝つ喜びを教えたい!」
そんな矛盾する想いに悩みながら、美香子は目標に向かって一所懸命頑張る生徒たちと信頼関係を築いていく。
そして教師としての自信も取り戻していった。


だが、大切な試合を間近に控えたある日、「おっぱいの約束」が学校に知られ大問題に……。
果たして生徒たちは試合に勝って、先生のおっぱいを見ることができるのか?
そして美香子は教師として生徒たちに何をしてあげられるのか……(ストーリーは公式HPより引用し構成)


いや~、面白かったです。
笑いの場面あり、涙の場面ありで、とにかく楽しめました。
内容的には、ベタ過ぎるほどベタな内容。
批判しようと思えば、いくらでもできそうな感じの作品です。
でも、そうはしたくない……そう思わせる不思議な映画。
懐かしさというか、昔の自分に久しぶりに再会するような作品です。


ストーリーもさることながら、この作品の魅力は音楽。
全編に流れるのは、70年代のヒット曲の数々。
「渚のシンドバット」ピンクレディ
「ルージュの伝言」松任谷由実 
「卒業写真」松任谷由実 
「ウィスキーコーク」矢沢永吉
「夢中さ君に」チューリップ
「HERO(ヒーローになるときそれは今)」甲斐バンド
「風を感じて」浜田省吾
「燃えろいい女」ツイスト
「道標ない旅」永井龍雲
「微笑みがえし」キャンディーズ
「オリビアを聴きながら」杏里
そして、エンドロールには、「個人授業」が流れる。
歌っているのは、持田香織(Every Little Thing)と田島貴男(オリジナル・ラブ)によるユニット【CaoCao】。
フィンガー5の名曲をROCKにカバーしており、ラストを締めくくるには最高の曲。
音楽を聴いているだけでも楽しい作品だし、スクリーンに映し出される70年代の街の風景にも、懐かしさで涙がチョチョ切れる。

特に、九州在住の40代、50代の人にはオススメの映画だ。
ただ、チケット窓口で「おっぱいバレー」と言わなければならないという大きなハードルがある。(ほんまかいな!)
そんなチケットを買うのが恥ずかしい人の為に、先日、映画会社が、
「恥ずかしい人は、略語の『OPV』(おっぱいバレー)でも買えるようにします」
と、大々的にマスコミを使って発表したとのこと。
でも、田舎の映画館で、「『OPV』大人1枚」と言って、果たして通じるのか心配だ。
かえって傷口を広げる結果になりかねない。
ここは勇気を持って、大声で言ってみよう!
「『おっぱいバレー』大人1枚!」
その後のことは責任を負いかねるので、あくまでも自己責任ということで……(オイオイ)
健闘を祈る!

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11 コメント

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ぶははははははは~~~ (かず)
2009-04-26 21:53:24
大笑い~~。
お腹抱えて笑いましたぁ。すばらしいレポです!!(特に前半)

1979年の北九州が舞台だとは知りませんでした。

おっぱいバレー。
そそられますなぁ。。( ̄¬ ̄) ジュル・・・・(違う違う)
返信する
ありゃりゃ。。 (かず2)
2009-04-26 21:57:54
あまりに大笑いして肝心な事を書いてない。
懐かしい音楽がずらずら。。
それだけでも大変興味が沸いてきます。。
おっぱいバレー( 。人。)  ・・笑
返信する
OPV (お母ちゃん)
2009-04-26 22:47:59
OPVなんて言ってもハァ~って聞き返されそうですね
結局何度もタイトルを係員に言うはめに  
登山家市毛良枝さんの顔がぼんやり見えますね

いい映画が続くときには毎週なのですが、最近はなかなか観たい映画がないのですよ
剣岳・点の記は6月だし最近では「おくりびと」の再映を観たきりです 

大阪ハムレットのような映画をまたみたいですね
返信する
オススメです (タク)
2009-04-27 05:25:41
かずさんへ

>ぶははははははは~~~
>大笑い~~。
>お腹抱えて笑いましたぁ。すばらしいレポです!!(特に前半)

本編とは関係ないところで褒めて頂き、恐縮です。
この映画、中年男性の場合(特に1人の場合)、とにかく映画館の座席に座るまでが一苦労。
その苦労を回避する為か、『おっぱいバレー』を見に来た人は中年夫婦が多かったような……
きっと、奥さんに「一緒に見に行って下さい」と奥さんに頼んで、しかもチケットも買ってもらったに違いありません。

>1979年の北九州が舞台だとは知りませんでした。

原作本では静岡県なんですよ。
時代背景も違います。
だから、映画では1979年の北九州に舞台設定してくれたことで、我々九州人、昭和54年頃に10代20代だった人たちにはタマラナイ作品になっているのです。

>おっぱいバレー。
>そそられますなぁ。。( ̄¬ ̄) ジュル・・・・(違う違う)

私の体験から言っても、中学生男子にとってのおっぱいは、とりわけ年上の女性のおっぱいは、キラキラと光り輝く憧れの対象でした。
それを、この映画はうまく表現していると思います。
オススメです。

>ありゃりゃ。。
>あまりに大笑いして肝心な事を書いてない。
>懐かしい音楽がずらずら。。
>それだけでも大変興味が沸いてきます。。

私個人的には、浜田省吾の曲にグッときましたね。
私は映画の中では美香子先生世代。
この頃の浜省の曲には思い出があるので……

>おっぱいバレー( 。人。)  ・・笑

オイオイ
返信する
市毛良枝さん (タク)
2009-04-27 05:44:42
お母ちゃんへ

>OPVなんて言ってもハァ~って聞き返されそうですね
>結局何度もタイトルを係員に言うはめに

そうなんですよ~
なんだか墓穴を掘りそうで……
  
>登山家市毛良枝さんの顔がぼんやり見えますね

市毛良枝さんが重要な役を果たしてます。
彼女がスクリーンに登場してきた時は嬉しかったですね。
1999年に刊行された市毛良枝著『山なんて嫌いだった』は何度も読んでいる愛読書です。
彼女の山に対する姿勢も好きですね~

>いい映画が続くときには毎週なのですが、最近はなかなか観たい映画がないのですよ
>剣岳・点の記は6月だし最近では「おくりびと」の再映を観たきりです 
>大阪ハムレットのような映画をまたみたいですね

私も久しぶりの映画です
春休み期間中前後は、子供向け、ファミリー向けの作品が多く、あまり興味をそそられませんでしたね。
でも、これからはけっこう良い作品が出てくると思います。
私個人的には6月17日公開の『愛を読むひと』に期待しています。
原作本の『朗読者』に感動していたもので……
主演が私の好きなケイト・ウィンスレットというのも嬉しいですね。
返信する
こんばんは (panda)
2009-04-28 02:03:05
私ぐらいになると「おっぱいバレー一枚」と言っても違和感ないかもですね。ちょっと悔しい (*^-^*)ゞ
この前聞いた時も笑ってしまったけれど、また笑ってしまいました。

タクさんは浜田省吾ですか?うちの旦那さまがたくろう命だから、ときどき会話に出てきたけれど、よくおぼえてないです。
私はユーミン、チューリップ、甲斐バンドかな。なつかしいですね。
いつも思うんだけどタクさんは映画に本に山にと時間を上手に使っていますね、私も見習わなければ…
返信する
すべて楽しみの時間 (タク)
2009-04-28 05:15:12
pandaさんへ

>私ぐらいになると「おっぱいバレー一枚」と言っても違和感ないかもですね。ちょっと悔しい (*^-^*)ゞ
>この前聞いた時も笑ってしまったけれど、また笑ってしまいました。

やはり女性よりも男性、特に中年男性が難しいように思います。
この映画を一番見たいと思っているのは、中年男性だと思うのですがね~
『おっぱいバレー』を見に来ていた人に、夫婦と思われる中年カップルが多かったのは、本文に書いたように、やはり抵抗感がない奥様に買ってもらったからではないかと……

>タクさんは浜田省吾ですか?うちの旦那さまがたくろう命だから、ときどき会話に出てきたけれど、よくおぼえてないです。

吉田拓郎も懐かしい~
一番思い出に残っているのは、1972年に発売されたアルバム『元気です』ですね。

>私はユーミン、チューリップ、甲斐バンドかな。なつかしいですね。

私も、
ユーミンの「リフレインが叫んでる」
チューリップの「青春の影」
甲斐バンドの「裏切りの街角」
http://www.youtube.com/watch?v=Git3t8RuC4I
が好きでしたね。

>いつも思うんだけどタクさんは映画に本に山にと時間を上手に使っていますね、私も見習わなければ…

楽しみの選択肢をたくさん持っていると、どんな時にも楽しめますからね
空いている時間は、すべて楽しみの時間。
有効に使わないとね
山岳小説を読んだり、山が舞台の映画を見たり、山に文庫本を持って行ったり……と、そんなこともしています。
返信する
Unknown (リー)
2009-04-28 16:31:57
お久しぶりです。
映画レビューの方もお久しぶりです。(笑)

面白そうな映画ですね~
舞台設定が静岡から北九州に変更になったのには何か理由があるのでしょうか?
舞台が北九州というのがそそられます。(笑)
音楽も楽しみですね~♪
仲村トオルさんも出ているようですね~
返信する
KFC (タク)
2009-04-28 20:01:35
リーさんへ

>お久しぶりです。
>映画レビューの方もお久しぶりです。(笑)

しばらく山に集中しておりました。
映画の方も興味をそそられる作品がなかったので、ご無沙汰しておりました。
これからは、面白そうな作品がたくさんありそうなので、期待して下さい。

>面白そうな映画ですね~
>舞台設定が静岡から北九州に変更になったのには何か理由があるのでしょうか?
>舞台が北九州というのがそそられます。(笑)

この映画には、KFC(北九州フィルム・コミッション)が、ロケ地誘致に、強力に動いたと言われています。
KFCとは、1989年に北九州市広報室イメージアップ班として発足した国内初のFC組織で、映画やTVドラマ・の撮影を全面的にサポートする非営利組織です。

読売新聞によると、
《監督の羽住英一郎さんは、ロケ地として同市を選んだ理由について、「古い街並みが残っており、時代設定にぴったりだった」と説明した》
《撮影の誘致活動などに取り組む北九州フィルム・コミッションによると、同市での映画撮影は2000年以降35本目。
今回は羽住さんが監督した別の映画『海猿』なども同市内で撮影されたことから、羽住さんが『おっぱいバレー』を監督することを知った同コミッションが、学校などの候補地を選んだ上で積極的にアピールしたという》

北九州の強いアピールと、監督の思惑が一致したということでしょう。
最近は、このように、映画やTVドラマのロケ地誘致を積極的にアピールする市町村が増えてきました。
佐賀県内では、TVドラマ『佐賀のがばいばあちゃん』のロケ地誘致で、武雄市が有名になりましたね。
武雄市では、年内に『佐賀のがばいばあちゃん』続編のロケが予定されており、来年放映予定とか。
また面白くなりそうです。

>音楽も楽しみですね~♪

音楽だけでもノリノリで楽しめますよ

>仲村トオルさんも出ているようですね~

仲村トオルさんが、ちょっと恥ずかしそうに、
「ナイスおっぱい!」
と呟く場面があります。
必見です。
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昨日、観てきました♪ (肉まん)
2009-05-04 11:30:20
タクさん、こんにちは
昨日マイカルで観てきました。
なかなか楽しい映画でしたね。
先日、DVDで「僕の彼女はサイボーグ」を見てたので、綾瀬はるかさんにまた会えるなあと楽しみでした。
彼女はごく普通のお嬢さんなんだけど、キリリとした顔立ちや、立ち振る舞いや背筋が伸びたきれいな姿勢がいいせいか女優として、これからまだまだ大いに伸びそうですね。

映画で流れていた音楽がよかったなあ。
すべて知ってました。
1曲だけわからなかったら、永井龍雲さんだったんだなあ。懐かしい。
「微笑みがえし」と「夢中さ君に」が曲を聴いて一番嬉しかった曲でしたね。
ロボット社さすがです。

そうそう、マディスン・スクエア・ガーデンの青いバックにはおもわず笑ったなあ。
中学か高校時代に愛用してたもんで・・・

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