一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

映画『TIME/タイム』 ……いくらでも深読みのできる超面白映画……

2012年02月23日 | 映画
あなたは、今、何歳だろうか?
これまでの人生で、最も幸福だった年齢は、何歳だったろうか?
あなたが、最も美しかった年齢は?
もし、成長(もしくは老化)をストップできるとしたら、
あなたは、何歳でストップして欲しいと思うだろうか?

映画『TIME/タイム』の舞台は、人類が老化を克服した近未来。
この世界の唯一の通貨は“時間”。


全ての人間の成長は、25歳でストップする。


この世界は“富裕ゾーン”と“スラムゾーン”の2つに分かれている。


全ての人間の左腕には、《ボディ・クロック》と呼ばれるデジタル時計が刻まれており、


25歳になった瞬間にボディ・クロックが起動し、残りの“余命”がカウントダウンされる。


全ての人間の時間を監視するのは、時間監視局員(タイムキーパー)。


時間は、お互いの手をつなぐ行為により、“分け与える”または“奪う”事が可能になる。


こういうザックリとした設定で、物語は始まる。

限られた一部の“富裕ゾーン”の住人が永遠の命を享受する一方で、
圧倒的多数の“スラムゾーン”の人々は余命は23時間。
生き続けるためには、日々の重労働によって時間を稼ぐか、他人からもらう、または奪うしかない。
ある日、スラムゾーンに住む青年ウィル(ジャスティン・ティンバーレイク)は、
富裕ゾーンからやって来た、人生に絶望した男ハミルトン(マット・ボマー)から116年という時間を譲り受ける。
その直後、ウィルの目の前で、母親のレイチェル(オリビア・ワイルド)がわずか1秒という時間のために息絶えてしまう。
残酷な運命に怒りを覚えたウィルは、この世界の謎に挑むことを決意し、タイムゾーンを超えて富裕ゾーンへ向かう。


そこで出会ったのは、変化のない日常生活に辟易していた大富豪の娘シルビア(アマンダ・セイフライド)。


そして、時間を監視する時間監視局員のレオン(キリアン・マーフィー)が、ハミルトン殺害の容疑でウィルを追う。


レオンに追い詰められたウィルは、近くにいたシルビアを人質にとって逃走。


ウィルの一方的な行動で始まった逃走劇だったが、絶体絶命の危機を潜り抜ける中で、シルビアはウィルの本当の目的に気づき始める。
一体誰が何のためにこのようなシステムを作ったのか?
2人の間には、いつしか共感を超えた恋心が芽生え、執拗な追跡をかわしながらの逃避行が続く。
時間に支配された世界の果てで待ち受ける衝撃の結末とは……?
(ストーリーはパンフレット等から引用し構成)


人類がなぜ老化を克服できたのかは、“遺伝子操作”という一言で片づけられ、説明はほとんどない。
なぜ25歳で成長がストップするかも謎のまま……
(おそらく25歳が人間の最も美しく活動的な年齢と考えられているのだろう)
先程、私は、「こういうザックリとした設定で、物語は始まる」と書いたけれども、
映画を見ていると、いろんな矛盾が噴出してきて、
人によっては、「見るに堪えない」映画になる恐れがある。
その証拠に、「Yahoo!映画」などのサイトでは、評価があまり高いとは言えない。

しかし、私は面白いと思った。
ザックリとした設定ながら、
この作品は、通貨を“時間”に設定したことで、
もう成功の半分は勝ち取っているような気がする。
主人公のふたりが“時間”を盗んでスラムゾーンの人々に与えようとするが、
物価と金利を同時に上がり、価値がみるみるうちに目減りしていく。
資本主義社会のしくみを実にうまく皮肉った作品だと思う。
何万年も余命を持った富裕層と、
その日暮らしで、いつ寿命が尽きるかもしれない貧困層。
今、“格差”が社会問題となっているアメリカの情勢を巧みに表現して、
私はとても面白く見ることができた。

この映画には、25歳以下の人しか出て来ないので、
親子三代が並んでも、こんな感じ。(笑)


若い人ばかりしか出て来ない映画というのも奇妙なものだが、
主役を演じたふたり、
ジャスティン・ティンバーレイクと、


アマンダ・セイフライドは、


その中でも一際輝いていた。

独特の存在感で目立っていたのは、
時間監視局員(タイムキーパー)を演じたキリアン・マーフィ。
『真珠の耳飾りの少女』(2002)
『麦の穂をゆらす風』(2006)
などが印象に残っている男優だが、この作品でも強烈な印象を残す。
彼がいたことで、この作品は一層面白味を増したと思う。


いくらでも深読みできる映画なので、
貪欲に楽しんでもらいたい。
批判しているだけではもったいない作品である。

スラムゾーンで貧しく暮らすウィルと、富裕ゾーンで退屈な日々を送るシルビアが、“時間”の銀行強盗を繰り返すシーンは、映画『俺たちに明日はない』を思い出させる。
原題は『Bonnie and Clyde』だけれど、
『俺たちに明日はない』という邦題が、映画『TIME/タイム』にも実にピッタリと当てはまると思う。
これも、深読みのし過ぎだろうか……

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