一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

映画『20センチュリー・ウーマン』 ……エル・ファニングに逢いたくて……

2017年06月12日 | 映画


エル・ファニングが好きで、
彼女の出演作、
『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(2009年2月12日にレビュー)
『SUPER8/スーパーエイト』(2011年7月14日にレビュー)
『SOMEWHERE』(2011年7月28日にレビュー)
『幸せへのキセキ』(2012年6月21日にレビュー)
『マレフィセント』(2014年8月2日にレビュー)
『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』(2016年8月28日にレビュー)
『ネオン・デーモン』(2017年4月12日に鑑賞したがレビューはまだ書いていない)
など、(近くの映画館で上映がなかった作品以外は)ほとんど見ている。
現在、日本では、
エル・ファニングの出演作が2本(『夜に生きる』と『20センチュリー・ウーマン』)公開されているが、
『夜に生きる』の方は、九州では現在1館(Tジョイ博多)しか上映されておらず、
見る機会を得ていないが、
『20センチュリー・ウーマン』の方は佐賀でも公開されてる(109シネマズ佐賀)ので、
先日、仕事帰りに見に行ったのだった。


1979年のカリフォルニア州サンタバーバラ。
ドロシア(アネット・ベニング)は、
1924年生まれの55歳。
シングルマザーとしてひとり息子のジェイミーを育てている。


毎日、新聞の株価情報をチェックし、
ほかのタバコに比べて健康的という理由でセーラムを大量に吸い、
イギリスのリチャード・ アダムスによる児童文学『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』を読んで、木彫りのウサギを作り、
長いこと男の人とデートしていない。
女性パイロットに憧れ、ハンフリー・ボガートが理想の男性。


ジュリー(エル・ファニング)は、
1962年生まれの17歳。
ジェイミーの近所に住む幼なじみであり親友。
セラピストの母親に、日々、グループセラピーの参加を強いられ、


新しい父親、脳性マヒの妹とも馴染めず、家庭に対して強い違和感を抱いている。


セックス経験は豊富だが、心を許せる相手はジェイミーだけ。
ジェイミーのベッドに毎晩忍び込み、
何でも話せる関係でありながら、セックスは厳禁。
二人の関係は、「友達以上」「恋人未満」の状態が続いている。


アビー(グレタ・ガーウィグ)は、
1955年生まれの24歳。
ドロシアの家で部屋を間借りしているパンクな写真家。
かつてニューヨークのアートシーンに憧れ、アーティストを目指していたが、
子宮頸がんを患い、地元へと戻ってきた。
人生を模索している最中の女性。
日々の出来事を日記代わりに撮影するのが趣味。
パンクロック好きで、ジェイミーに大きな影響を与える存在となる。
ドロシアにも、「ジェイミーにあなたの生き方を見せてやってほしい」と頼まれる。


ドロシアの息子ジェイミー(ルーカス・ジェイド・ズマン)は、
1964年生まれの15歳。


思春期真っ只中で、スケボー大好きな少年。
「大恐慌世代」の母親に反発し、パンクロックを聴くようになり、
ロスのライブハウスにも出入りする。
トーキングヘッズが好きだと言ったら、パンクロック仲間に「ART FAG」と落書きされてしまう。
アビーやジュリーから薦められたフェミニズムの本を読み、
男らしさとは何かを女性たちから見つけようとする。
ジュリーに思いを寄せている。


息子との関係が上手くいっていないことに悩むドロシアは、
アビーとジュリーに、
「複雑な時代を生きるのは難しい。彼を助けてやって」
とお願いする。


15歳のジェイミーと、
三人の女性たちの夏が始まった……




1979年のカリフォルニア州サンタバーバラでの、ひと夏の物語である。
私は、この「ひと夏の物語」という設定の映画に弱い。(笑)
夏は暑くて、過ごしやすい季節ではないが、
それだけにひとつひとつの記憶が鮮明で、
思い出までもが原色に彩られている。
『おもいでの夏』や『スタンド・バイ・ミー』など、
夏を舞台にした映画は、
夏休みの思い出のように、今でも私の心の中の大事な部分にある。

15歳の少年ジェイミーは、
アビーやジュリーにいろんなことを教わりながらも、
彼女たちを助けたりもする。
ジュリーから、
「クラスメートと避妊せずにセックスをしてしまった。もしかしたら妊娠したかもしれない」
と打ち明けられたときは、
自ら薬局へ行き、ジュリーのために妊娠検査薬を購入する。
アビーが検査の結果を聞くために病院へ行くときには、
不安だろうからと、付き添うこともする。


少年のひと夏の物語であると同時に、
三人の女性のそれぞれの成長物語にもなっているのが好い。
ラストで、
『おもいでの夏』や『アメリカン・グラフィティ』と同じく、
登場人物のそれぞれの「その後」が紹介される。
それが、とても印象深く、心に刻まれる。


監督は、『人生はビギナーズ』で自身のゲイの父親をモデルに描いたマイク・ミルズ。
本作『20センチュリー・ウーマン』では、
今度は、母親と姉をモデルにしたとのこと。


その母親ドロシアを演じたアネット・ベニング。
かつては、「なんて美しい女優なんだろう」と思っていたが、
さすがに、年相応の……(後は言うまい)
ちょっと複雑な心境ではありました。


パンクな写真家・アビーは、監督の姉がモデル。
監督の姉は、アビーのようにニューヨークへ行って、アートやパンクや写真に出会い、
でも子宮頸がんを患ってサンタバーバラに帰って来なければならなかったとのこと。
監督の姉は、アビーを演じたグレタ・ガーウィグに二人だけで実際に会い、
いろんな話をしたそうだ。
その体験を活かしたグレタ・ガーウィグの演技は本当に素晴らしかった。


アネット・ベニングも、グレタ・ガーウィグも、
とても魅力的ではあったが、
私は、実際のところ、
やはりエル・ファニングしか見ていなかったような気がする。(コラコラ)
それほどの輝きがあった。


幼なじみに、エル・ファニングのような女の子がいただけで、
その男の子の人生は、半分は成功したようなものではないか。(そこまで言う?)


だが、エル・ファニングが演じたジュリーは、
毎晩のようにジェイミーのベッドへ忍び込んできて、添い寝をする。
それでいて、
「セックスをすると友情が終わる」
と言って、ジェイミーとはセックスをしない。
こういう「生殺し」のような状態は、身体にも心にも実に良くない。(笑)


このことを知ったアビーは、
「セックスさせず横に寝るジュリーが、ジェイミーの自信を奪ってる」
と言う。(けだし名言)
その後のジュリーとジェイミーがどうなるかは映画を見てもらうとして、(オイオイ)
エル・ファニングの輝きが眩しい一作であった。


そういえば、
『キネマ旬報』(2017年6月下旬号)の巻頭特集は、
「新しい時代をつくる海外の俳優100人 U40 女優篇」で、
表紙はエル・ファニングであった。
今後、最も期待されていいる女優の一人と言えるだろう。


映画館でぜひぜひ。


この記事についてブログを書く
« 「ラビリンス」…香港・九龍で... | トップ | 映画『22年目の告白-私が殺... »