
最初に苦言をひとつ。
タイトルがよくない。
『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』
長すぎる。
タイトルですべてを語ってしまってはいけない。
TV文化の悪しき影響か?
まるで新聞のTV番組表のタイトルのようだ。
思い切って『RAILWAYS』だけでもいいが、これは明らかに『ALWAYS』の二番煎じで、ROBOTが企画・製作していること以外関係ないのに、これもイマイチ。
このタイトルを除けば、なかなかの映画であった。
どんな物語かというと、タイトル通り、49歳で電車の運転士になった男の物語。(笑)
筒井肇(中井貴一)は、一流企業に勤める49歳。
取締役への昇進の見返りに、リストラを推進する役割を担う。
同期入社で親友でもある工場長(遠藤憲一)にも、工場閉鎖をドライに言い渡す会社人間。
だが、家庭を顧みない肇から、妻(高島礼子)や娘(本仮屋ユイカ)の心は離れる一方だった。

そんなある日、田舎で暮らす母親(奈良岡朋子)が倒れたと連絡が入る。
追い打ちをかけるように、工場を閉鎖を言い渡した工場長が事故死したとの知らせが……
久しぶりに帰った故郷で、肇は、仕事に追いかけられるように走り続けた日々を振り返る。
ギスギスした関係の妻。
問いかけに満足に返事もしない娘。
そして、疲れ切っている自分。
家族を気遣うこともなく、母親には親孝行のひとつもしていない。
〈俺は、こんな人生を送りたかったのか……〉
東京と田舎を行き来するうちに、肇は決意する。
子供の頃、母親に語った自分の夢「一畑電車(バタデン)の運転手になる」ことを――
中井貴一。
前半の冷徹なエリート企業戦士と、後半のバタデン運転手が、まるで別人のようで、ちょっと不自然な感じが残った。
巧い俳優なので、違和感が最小限に抑えられたが、脚本がもう少し練られていたら、もっと自然に見られたかもしれない。
中井貴一だからこそ演じられたという部分が大きかったと思う。

高島礼子。
ここ数年では、
『K-20 怪人二十面相・伝』(2008年)』
『島田洋七の佐賀のがばいばあちゃん』(2009年)
が印象に残っている。
『島田洋七の佐賀のがばいばあちゃん』では、私の配偶者が昔通った分校でロケがあり、より親近感が……

本仮屋ユイカ。
爽やかさはそのままに、女優として大きくなってきている。
自分の娘はこうあって欲しい……と、世の父親が願う理想の娘像を好演していた。
終盤、(大学卒業後は)介護士になるのではないかと思わせるシーンがあり、好感度アップ。

三浦貴大。
父・三浦友和、母・山口百恵を両親にもつサラブレッド。
この映画がデビュー作。
やや硬い演技ながら、独特の存在感があり、今後が楽しみ。

奈良岡朋子。
確か、もう80歳を過ぎておられる筈。
昔、『蛍川』という映画を見て、その演技に感動。
この作品でも、その演技力はいささかも衰えていない。

遠藤憲一。
個人的に大好きな俳優。
この人が出てくるだけで嬉しくなる。
甲本雅裕。
『花のあと』の素晴らしい演技を見ているだけに、本作でも楽しみにしていた。
一畑電車運転手(指導係)を好演。
今年は、この後、
『ねこタクシー』『踊る大捜査線 THE MOVIE 3』『酔いが醒めたら、うちに帰ろう』と出演作が続く。
今、注目の男優といってイイだろう。
宮崎美子。
この作品で、最も好きだった役柄が、この宮崎美子演ずる介護士・森山亜紀子だった。
私の二女が結婚まで介護士をしていたし、現在、介護士の方と会う機会が多い為、もっとも身近で関心のある職業。
仕事の内容の割に、給与や待遇の面で報われることの少ないことを知っているので、宮崎美子演じる明るくて優しい介護士にとても感動した。
一流企業で働く企業戦士が、会社人間のむなしさに気づき、
子供の頃の「バタデンの運転手になる」という夢を叶えるために一歩を踏み出す。
そして、真の人間としての喜びや希望を見出していく。
その姿を妻や娘が見て、バラバラになっていた家族の心がひとつなっていく――
というストーリーは、ちょっと出来すぎの感があるが、
惑える50歳前後の大人たちへの応援歌と思えば、そう違和感なく見ることができた。
映画監督の大林宣彦の著作に、『人生には好きなことをする時間しかない』というタイトルのエッセイ集がある。
幸福に生きる秘訣は、自分のいちばん好きなことをして生きる、ということに尽きる。
そしていちばん幸福な時間の使い方をして自分が生きていれば、ひとに優しくなれるし、ひとを幸福にすることもできる……という内容。
《人生には好きなことをする時間しかない》
本当にそうなのだ。
男も女も、50歳というのが、ひとつのターニングポイントのような気がする。
これまでの自分の人生を振り返り、「このままでいいのか?」と思い惑う。
家族とは?
会社とは?
人生とは?
夢とは?
本当に大切なものとは?
様々な想いが去来し、これからの人生をどう過ごしたらいいのかを模索する。
この映画『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』は、その答えのひとつを示して見せてくれたように思う。
ただ、実際に会社を辞めて、自分の夢に向かって一歩を踏み出す人は稀だ。
だからこそ、このような映画がウケるのかもしれない。
支持されるのだろう。
なぜなら、この映画を見る人の多くは、それができない人たちだから……(爆)
〈俺も会社を辞めて、好きなことしてみたい〉
と願う、多くの中年の夢を乗せて、電車は今日も走るのだ。
この映画を見て素晴らしいと思ったのは、物語の部分もさることながら、
その、電車の走る姿、
そして風景。

映画の冒頭の、出発する車内に光が差し込んでくるシーン、
美しい田園風景の中を電車がゆっくり走るシーン。
どこか人間くさく、温かみを感じさせるバタデン。

本当の主役は、この電車と、出雲の風景なのかもしれない……
そう思わせるほど、美しく、素敵だった。
(ということは、映画のタイトルは『RAILWAYS』で正解だったのかも……ね
)
タイトルがよくない。
『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』
長すぎる。
タイトルですべてを語ってしまってはいけない。
TV文化の悪しき影響か?
まるで新聞のTV番組表のタイトルのようだ。
思い切って『RAILWAYS』だけでもいいが、これは明らかに『ALWAYS』の二番煎じで、ROBOTが企画・製作していること以外関係ないのに、これもイマイチ。
このタイトルを除けば、なかなかの映画であった。
どんな物語かというと、タイトル通り、49歳で電車の運転士になった男の物語。(笑)
筒井肇(中井貴一)は、一流企業に勤める49歳。
取締役への昇進の見返りに、リストラを推進する役割を担う。
同期入社で親友でもある工場長(遠藤憲一)にも、工場閉鎖をドライに言い渡す会社人間。
だが、家庭を顧みない肇から、妻(高島礼子)や娘(本仮屋ユイカ)の心は離れる一方だった。

そんなある日、田舎で暮らす母親(奈良岡朋子)が倒れたと連絡が入る。
追い打ちをかけるように、工場を閉鎖を言い渡した工場長が事故死したとの知らせが……
久しぶりに帰った故郷で、肇は、仕事に追いかけられるように走り続けた日々を振り返る。
ギスギスした関係の妻。
問いかけに満足に返事もしない娘。
そして、疲れ切っている自分。
家族を気遣うこともなく、母親には親孝行のひとつもしていない。
〈俺は、こんな人生を送りたかったのか……〉
東京と田舎を行き来するうちに、肇は決意する。
子供の頃、母親に語った自分の夢「一畑電車(バタデン)の運転手になる」ことを――
中井貴一。
前半の冷徹なエリート企業戦士と、後半のバタデン運転手が、まるで別人のようで、ちょっと不自然な感じが残った。
巧い俳優なので、違和感が最小限に抑えられたが、脚本がもう少し練られていたら、もっと自然に見られたかもしれない。
中井貴一だからこそ演じられたという部分が大きかったと思う。

高島礼子。
ここ数年では、
『K-20 怪人二十面相・伝』(2008年)』
『島田洋七の佐賀のがばいばあちゃん』(2009年)
が印象に残っている。
『島田洋七の佐賀のがばいばあちゃん』では、私の配偶者が昔通った分校でロケがあり、より親近感が……

本仮屋ユイカ。
爽やかさはそのままに、女優として大きくなってきている。
自分の娘はこうあって欲しい……と、世の父親が願う理想の娘像を好演していた。
終盤、(大学卒業後は)介護士になるのではないかと思わせるシーンがあり、好感度アップ。

三浦貴大。
父・三浦友和、母・山口百恵を両親にもつサラブレッド。
この映画がデビュー作。
やや硬い演技ながら、独特の存在感があり、今後が楽しみ。

奈良岡朋子。
確か、もう80歳を過ぎておられる筈。
昔、『蛍川』という映画を見て、その演技に感動。
この作品でも、その演技力はいささかも衰えていない。

遠藤憲一。
個人的に大好きな俳優。
この人が出てくるだけで嬉しくなる。
甲本雅裕。
『花のあと』の素晴らしい演技を見ているだけに、本作でも楽しみにしていた。
一畑電車運転手(指導係)を好演。
今年は、この後、
『ねこタクシー』『踊る大捜査線 THE MOVIE 3』『酔いが醒めたら、うちに帰ろう』と出演作が続く。
今、注目の男優といってイイだろう。
宮崎美子。
この作品で、最も好きだった役柄が、この宮崎美子演ずる介護士・森山亜紀子だった。
私の二女が結婚まで介護士をしていたし、現在、介護士の方と会う機会が多い為、もっとも身近で関心のある職業。
仕事の内容の割に、給与や待遇の面で報われることの少ないことを知っているので、宮崎美子演じる明るくて優しい介護士にとても感動した。
一流企業で働く企業戦士が、会社人間のむなしさに気づき、
子供の頃の「バタデンの運転手になる」という夢を叶えるために一歩を踏み出す。
そして、真の人間としての喜びや希望を見出していく。
その姿を妻や娘が見て、バラバラになっていた家族の心がひとつなっていく――
というストーリーは、ちょっと出来すぎの感があるが、
惑える50歳前後の大人たちへの応援歌と思えば、そう違和感なく見ることができた。
映画監督の大林宣彦の著作に、『人生には好きなことをする時間しかない』というタイトルのエッセイ集がある。
幸福に生きる秘訣は、自分のいちばん好きなことをして生きる、ということに尽きる。
そしていちばん幸福な時間の使い方をして自分が生きていれば、ひとに優しくなれるし、ひとを幸福にすることもできる……という内容。
《人生には好きなことをする時間しかない》
本当にそうなのだ。
男も女も、50歳というのが、ひとつのターニングポイントのような気がする。
これまでの自分の人生を振り返り、「このままでいいのか?」と思い惑う。
家族とは?
会社とは?
人生とは?
夢とは?
本当に大切なものとは?
様々な想いが去来し、これからの人生をどう過ごしたらいいのかを模索する。
この映画『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』は、その答えのひとつを示して見せてくれたように思う。
ただ、実際に会社を辞めて、自分の夢に向かって一歩を踏み出す人は稀だ。
だからこそ、このような映画がウケるのかもしれない。
支持されるのだろう。
なぜなら、この映画を見る人の多くは、それができない人たちだから……(爆)
〈俺も会社を辞めて、好きなことしてみたい〉
と願う、多くの中年の夢を乗せて、電車は今日も走るのだ。
この映画を見て素晴らしいと思ったのは、物語の部分もさることながら、
その、電車の走る姿、
そして風景。

映画の冒頭の、出発する車内に光が差し込んでくるシーン、
美しい田園風景の中を電車がゆっくり走るシーン。
どこか人間くさく、温かみを感じさせるバタデン。

本当の主役は、この電車と、出雲の風景なのかもしれない……
そう思わせるほど、美しく、素敵だった。
(ということは、映画のタイトルは『RAILWAYS』で正解だったのかも……ね

