MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『泣く子はいねぇが』

2020-12-12 00:49:25 | goo映画レビュー

原題:『泣く子はいねぇが』
監督:佐藤快磨
脚本:佐藤快磨
撮影:月永雄太
出演:仲野大賀/吉岡里帆/寛一郎/山中崇/田村健太郎/古川琴音/余貴美子/柳葉敏郎
2020年/日本

愛する者に近づく方便としての「よそ者」について

 秋田県の男鹿半島で暮らす主人公の後藤たすくは妻のことねとの間に娘が生まれたばかりなのだが、その2人の関係は上手くいっていないように見える。その後、たすくは地元の伝統行事である「ナマハゲ」で鬼の面を被って例年通りに参加するものの、打ち上げで悪酔いしてお面を被っただけの素っ裸で町を走り回り、その模様がテレビで放送されたことから、翌年の行事は中止に追い込まれ、同様に追い込まれたたすくは故郷を出て東京で一人で暮らすことになる。しかしここで確認しておきたいことはたすくは決してアルコール依存症であるとはっきり描かれているわけではないことである。
 それから2年が経ち、離婚したたすくはフットサルの遊技場でアルバイトをしており、幼なじみの志波と再会したことを機に、地元に戻ったのはおそらく2020年の秋頃であろうが、2人が酒場で飲んでいると隣の客にクレームをつけられたたすくは相手と口論になり、志波が加わって大喧嘩に発展する。
 地元に戻ったものの、たすくに居場所はなく、母親たちのババヘラアイス売りの手伝いをしながら、志波を手伝うつもりでサザエを密漁していたのだが、警察官に見つかってしまう。その上、ことねには既に恋人がいて保育園に行っても2年以上経っているために自分の娘の凪がどの子なのか分かるはずもない。
 このようにストーリーを辿っていくと、本作のテーマは主人公の「子供っぽさ」という単純なことではなく「当事者」になれない苦悩が描かれていると思う。どこへ行っても弾き出されるたすくが選んだ行動が最後に描かれているのだが、敢えてナマハゲという「よそ者」に徹することで最愛の娘に近づくことなのである。


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