MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『サイレント・トーキョー』

2020-12-14 00:45:40 | goo映画レビュー

原題:『サイレント・トーキョー』
監督:波多野貴文
脚本:山浦雅大
撮影:山田康介
出演:佐藤浩市/石田ゆり子/西島秀俊/中村倫也/広瀬アリス/井之脇海/財前直見/鶴見辰吾
2020年/日本

ミスリーディングのし過ぎで迷走してしまった作品について

 「いったい何の話をしているんだ?」という言葉が登場人物の口からよく発せられるのだが、それはこの作品を観に来た観客も同様に感じることだと思う。
 時代設定は2019年の12月24日で、人気アプリの開発で『AERA』の表紙まで飾るようになった須永基樹には家族に問題があり、1992年のクリスマスイブに須永が両親と行ったレストランでの回想シーンなどが描かれるのであるが、須永を演じた中村倫也の代わりに子役が演じるのはともかく、須永の両親である朝比奈仁を演じた佐藤浩市も須永尚江を演じた財前直見も、さらには山口アイコを演じた石田ゆり子も含めて27年前のシーンは別人が演じておりどうも感情移入できないのである。渋谷のスクランブル交差点をあれほど忠実に再現したのに、何故特殊メイクで若き頃の佐藤や財前や石田を再現しなかったのか。
 敢えてネタバレで書くが、犯人の「日本の首相とテレビの生放送で一対一で対話させよ」という要求には無理がある。それで首相の信条を翻意させられるはずもなく、わざわざ捕まりに行くようなものなのだから、磯山毅首相がこの要求を呑まないのも疑問なのである。
 須永は渋谷の殺傷圏内の半径50メートル以内に入らなければ大丈夫という情報をオフィスの留守電に残されていた朝比奈仁のメッセージから知ったのだから、朝比奈仁と山口アイコは今回のテロの共犯でなければならない。山口がいた喫茶店に朝比奈が持ってきていたカバンの中にはレインボーブリッジに仕掛ける爆弾が入っていたはずであるが、世田志乃夫を始めとする警察に包囲され、少なくとも朝比奈は山口にテロの動機を語らせることにし、山口が動機を語り終えた時点で、償うために朝比奈は山口と心中する決心をしていたのではないだろうか。
 大作の割には99分という上映時間は短すぎると思う。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする