
分水池分水路脇で、ここは造成当時から漏水孔が度々現れる。付近一帯が地下水路のネットワークを完成させたような場所だから諦めているものの、漏水させない算段だけは怠れない。
水見回りではスコップも携行しておらず、次回の処理となる。
漏水孔の水準は泥水池への給水管の水準より僅かに低い。水量が減少すれば泥水池は断水の憂き目となるものの、一両日程度なら緊急性はない状況だ。それよりも腕がすっぽり入る程の漏水孔の先は何処につながっているのかさっぱりわからず、地下本路は大きいのだろうと経験則から推定される。
古老の話によると、小生は孤老だが昔、代掻き中の農耕牛が陥没して腰まで落ち、それ以後棚田を嫌がるようになったのだとか…。
それから10数年、その近くで出水中に陥没流入個所を見つけ、スコップと土嚢で埋める作業を開始した途端、小生の足元が崩れ落ち、人知れず死ぬかと思った事があった。
バケツの水をぶちまけたような水量だったが、あがらって這い上がるのに苦労した。まあ、孤老が苦労した話など面白くもないか。
あの陥没穴に投入した土嚢は何袋だったか。結局止めることが出来ず、水域となるのを避けて二つ池を造成したのだった。
漏水孔だけでなく出水し十分に水を含んだ堤や畦は柔らかい。この重要構造物を好んで狙い、猪が掘り返す。「踏んだり蹴ったり」などの暴力を受ける訳でもないが、漏水孔を踏みつけ猪の起こした土塊を蹴っとばしたりと、三つ巴のバトルは人知れず続くのだ。