愉悦

GITANESを入れる専用ポケットは必要だろうか。
それとは無関係に・・・。


洋服関係の会社に入りもう２０年以上経つ。

それなのにまったく手を出さなかったのは
誂え・つまりオーダーメイドだった。
面倒だからとか、レディーメイドで充分気に入った
服があるなどの理由でなんとなく近づかなかったのだが、

また春から着られるジャケットが要るなあ
と色々な品を物色している過程で
「そうか、オーダーがあるじゃないか」と
思い当たった次第である。

オーダーと言っても仮縫いなどなしのイージーオーダー
だから、それほど高額品でも高級品でもない。
定価よりは安くもなるし、決して手が出ない品ではなかった。


ツイッターのプロフィールに「黒ジャケット」などと
書いているのだから黒い生地にしようか、いや春から夏に
かけて着るものだし、花紺やブルー系もいいか
などと早くも迷い始める。

とりあえず採寸を先にやってしまう。


イージーオーダーだから、身体の主要サイズだけ採寸して
あとは「ゲージ」と呼ばれるサイズサンプルを試着し
それを調整していく。


どんな人でも既製品と実際の体型にはかならずギャップがある。
私の場合は肩幅と胸囲に問題がある。

そこが収まらないとその服は着られないが、そこに合わせると
胴回りがブカブカ大きすぎる。
シルエットの好みもあるから、ゲージの胴回りを絞っていくと
今度は胸囲や肩幅、アームホールの大きさや位置に差し障りが出る。


なんとかいろんなパーツの調整をし、ステッチやポケット、切羽など
いくつかの要望を出し、またいくつかの細かいディティールを決める。
例えば、シャツのボタンを２つ開けた場合とジャケットボタンの位置関係
などなど、イージーオーダーと言えども凝り始めるとキリがなくなる
（結局、他人にはわからない微妙な差なのだが）。


ようやく一段落。



生地もとりあえず第一候補を決めておいて、さらによさそうなものを
メーカーが持っていないかを確認してもらう。
数日かかるだろうが、その間待つのも悪くない。

生地が確定したらそれに合わせてさらに細かいデザインのリクエストをだす
かも知れないし、ボタンやステッチの色なども決めていくことになる。


身のまわりのいろいろなことが何でも簡単になっていくと
こういうくだらないコダワリのかたまりのような作業が
なかなか得難い愉悦となる。


仕上がるのは１ヶ月ほど先だろう。

プロフィール通り黒いジャケットになるのだろうか。
GITANESのパッケージのようなブルーに決めるのだろうか。