GITANESが吸えないのならどうしようもない。
それとは無関係に・・・。
街中だが目の前が比較的大きい公園になっている。
そんな立地に、様子のいい店があるのを見つけた。
カフェだ。
仕事の帰り、いつもとは違うルートを通ってみようと
クルマを走らせているときに見つけた店である。
夜の公園は暗い。
その店は、その暗がりにぽっかり浮かぶように
あった。
浮かぶように見えたのは、店内の照明がまことに
ちょうどよく、公園の暗がりとコントラストを
作っているからだろう。
その店は、昼間はそれなりににぎわっているらしいが
私が通る夜の時間帯は客もまばらで、観葉植物の
影が浮かび上がるばかりである。
レジカウンタと思われるところにはスタッフらしき
人物がふたりほどいて、椅子に腰かけているようだ。
その店が入っているそれほど新しくないビルは
外部に照明がひとつもなく、照明を仕込んだサインも
なく、だから店内照明に照らされるそのカフェの店内
の様子が、大きい窓から浮かび上がっている。
エドワードホッパーのナイトホークスといえば
私が大好きな絵なのだが、その絵から緊張感と
そして暗い予感をほとんど取り払ったような、
その店にはそんな空気が漏れている。
店のすぐ手前で信号待ちする機会には、通り過ぎるだけ
の日よりもさらにじっくり観察してしまう。
とてもゆったり時間が流れているように見えるのは
その時間帯にはその店は暇だからだろう。
前を通り過ぎる一瞬、あるいはそこから数分間
頭のなかで妄想するのが気に入っている。
どのようなメニューがあって、どんなオーナー、
どんなスタッフが働いていて、そして今日はどんな
客が来て、どのような会話があったのか。
まるでドラマのようなことが起こったか、あるいは
何事もなくただ、晴れた日に過ぎなかったのか。
そのような妄想が、仕事終わりの帰途に頭を過るのが
気に入っている。
私はその店に立ち入ったことは一度もない。
そして今後もおそらくない。
しばしばその前をクルマで通りかかるだけだ。
はてそんな店がどこにあったっけ?
土地勘のある方は詮索するだろうが、
そんなことどうでもいいではないか。
街中の暗がりにぽっかり浮かぶ、
様子のいい店がどこかにあるというだけで
充分いい話だろう。
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