GITANESを買い忘れていたことは最大の事件だった。
それとは無関係に・・・。
忘れたはずが
と言っても、「もうあの人のことは吹っ切れたハズだったのに・・・」
的な色艶のある話ではない。単純に忘れ物の話である。
スマホをリビングのテーブルに置いたまま会社に来てしまった。
『こんなところに置く日に決まって、忘れていくんだよなあ』
と思っていたらその通りに忘れてきた。
クルマを始動させて5分ぐらいだったから、十分引き返す時間は
あったのだが、もう道路の流れに乗ってしまっているしなあ、と
考えながら運転していたら、呆気なく会社に到着してしまった。
さて不便だなあ、スマホはやっぱり要るよなあ・・・
と上着のポケットに手を突っ込んだら、そこにスマホがあった。
いや、こんなところに入れた覚えは欠片もないのだ。それなのに
あった。誰もこんなところに入れてくれないから自分で入れたの
だろうが、まったく記憶にないのだ。
あ、イヤホンを置いてきてしまった。あれがないとコンビニまで
歩くときや、休憩室でバリアをはりながら休憩する際に不便なのだ。
どうしよう、コンビニかどこかで安いのを調達しようか
と考えながら、財布を取りだそうとしてカバンを開けたら
そこにイヤホンもあった。
これも自分でそこに入れた記憶がまったくない。
あ、万年筆のインク補充用のスポイトを忘れたと思ったら
これもカバンに入っていたし、あ、昨日書斎でいじっていた手帳!
あれがないとアカン!デスクに置きっぱなし!と思ったが、
これもまさかカバンにあったりして、と思ったら、カバンではないものの
コートのポケットから出てきた。
いやそれらは結果的に忘れ物にはならなかったのだ。
しかし、まったく記憶にないままにそれらをカバンやポケットに
ちゃんと入れたということ自体が「忘れ物するよりヒドくないか?」
と思えるのである。
忘れ物による自分の被害は一切ないのに、そういう次第で
精神的にはダメージを少なからず受けている訳だ。
忘れたいことだけきっちり忘れられて、覚えておきたいことは
ずっと覚えておきたい。
でも、覚えておきたいという願望が叶えられるかどうかもわからないから
どこかに記憶しておく必要がある。例えば手帳に書き留めるなどの
方法でなんとかしようと考える。
で、その手帳自体をどこかに置き忘れてしまうんだろうなあ。
二重三重の備えをしても、「忘れる」というどうしようもない現象
の前では無力である。
忘れる・が最強なのだ。
で、実は結びになかなか気の利いた結び方を思いついていて、
それに向かってここまで書いてきたのに、すっかり忘れてしまった。
まあいいか。