GITANESの煙は幻想を呼んでいる。
それとは無関係に・・・。
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怪しいマッサージ屋「だって、あれは警察に通報しても
なーんにもしてくれないよ。」
怪しいマッサージ屋はいつもの涼しい顔でそんなことを言う。
どうして?
正しい一般市民・防災部防災課防災班庶務係の私は
その投げやりにも思える反応に納得できない。
「どうしてさ?だって怪しいだろ?」
マ「怪しいだけではねえ・・・。薬物でもなければダメだろ。」
「え?違うの?」
マ「だから違うって。あれは闇金の使い走り。」
「は?闇金?」
マ「そ。小口で貸している闇金。駅裏あたりの業者だよ」
意外な答えだった。
「取り立てにやってきたってこと?」
マ「いや違うよ。小口で借りてる奴らが何人もいるんだ。」
「うん」
マ「で、元金は給料日まで返せないけど利息は付くわな」
「そりゃそうだ」
マ「で、金利が一日数千円とか小銭で払える分は付くから
借りてる奴らはそれだけ払いに来るの。」
「・・・?」
マ「クルマを止めてる日付と大体の時間を事前に知らせて、
そこに借りてる奴らが返しに来る。
さっと近づいてさっと金利分の銭を渡しさっと離れる。
事務所に払いに行ったり、借主の家へ集金に行くとか
ばっかりじゃないよ。」
「そんなことするんだ・・・」
マ「クルマの中の奴らは多分名簿でチェックしてるよ。
何月何日某500円、とかね。」
なんだ、薬物の売買ではなかったのか。そういえばコソコソ
している様子だとは言え、薬物売買にしては目立ちやすい。
「でもさあでもさあ、でもさあ」
マ「うるさいよ。なんだよ。」
私は食い下がる。
「闇の金貸しなんだから違法でしょ?違法なら警察に、」
マッサージ屋はあくびしながら被せるように言う。
マ「闇金が集金してるから捕まえて!なんて通報しても
警察は何にもしないよ。それだけならね。」
「そんなものなの?」
マ「そんなもんでしょ。世の中は。俺のマッサージ店だって
何の届出もしてないし違法だよ。でも警察には相手に
されてない。」
「そうなの?」
マ「そうだよ。届け出してないだけで内容は普通のマッサージ
だし、近所のじいちゃんばあちゃんしか来ないし。
騙したこともないしその辺の真っ当なマッサージより
かなり安いし。だからクレームもないから通報されない」
そうなのか。世の中というのはそういう風になっているのか。
防災部防災課防災班に身を置く者としては釈然としないような
そうでもないような。
「どうして闇金に詳しいの?」
マ「たまに借りるしね。だから摘発されたら困るよ。
防災さんがカネ貸してくれるんなら別だけど。」
「いやカネの貸し借りはしないよ。」
マッサージ屋は白衣のポケットから煙草を取り出し
火をつけた。
マ「まあ闇金の連中だからまともには見えないし、
裏には当然あぶねえのがついてるけど、踏み倒さなきゃ
どうってことない。一応借りる側が客だからね」
軽く手を振ってマッサージ屋と別れた。
防災部防災課防災班庶務係・細井明夫つまり私は不覚にも
そういった仕組みには疎かった。なんたる不覚か。
後日マッサージ屋と会ったときその話になって
『資本主義の裏側を見たような気分だ』と言うと
「大袈裟だよ防災さん」と呆れられた。
」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
写真の人物にまったく関係がないではないか。