伊集院静が作家としてデビューする前から数年間にわたり暮らしていた伝説の「逗子なぎさホテル」を題材にした「なぎさホテル」を読んだ。
彼の作品はこれまで何冊か読んだ事があるが、今回は彼自身の青春回顧小説であり、前妻である故・夏目雅子もM子として登場する。若い頃に破天荒な人生を送った揚句、東京を捨てて帰郷する途中で偶然立ち寄った逗子での約7年間の生活が描かれている。温情溢れるホテル支配人やホテル従業員が何とも温かい。彼のどこか「斜に構える姿勢」に何だか共感を得ながら、ページがどんどん進む。ビーチの喧騒や波の音や砂まじりの海風、眩しい光が目に浮かび、まるで自分が逗子に降り立ったような気分になる。
あっという間に読み終える。人生は本当に色々である。彼があの時、逗子に降り立つ事が無ければ・・・支配人と会う事が無ければ・・・彼の人生は大きく変わっていただろう。誰もが多かれ少なかれそんな事の繰り返しなのだろう。だったらやはり少しでも多くの人と知り合いたいものだ。